新卒社員の3年以内の離職率は約3割、30代になると半分以上の人が転職を経験し、そのうちの4人に1人が転職1回、6人に1人が転職2回を経験と転職はもはや当たり前の時代になりました。
「転職を数回繰り返すとなると、年功序列の恩恵は受けられそうにない」
「ライフワークバランスを整えて毎日を充実させたい」
などの理由から、正社員以外の雇用形態で転職することを考える人も多いようです。
あなたも派遣社員や契約社員での転職を考えたことがあるのでは?
同じ非正規雇用でも、派遣社員と契約社員では雇用主や待遇、仕事面などで違いがあります。
転職活動をする前に、派遣社員と契約社員の違いや、派遣社員や契約社員として働くことのメリット・デメリットを知ってこれからの働き方について考えましょう。
目次
雇用形態からみる派遣社員と契約社員の違い
雇用には有期雇用と無期雇用があります。
就業規則に定められた年齢(定年)まで会社に雇用義務があるのが無期雇用、雇用に期間の制限があるのが有期雇用です。
また、有期雇用と無期雇用のほかに、会社に直接雇ってもらう直接雇用とそうでないものがあります。
正社員は無期雇用かつ会社に直接雇ってもらう直接雇用。
雇用期間に定めがないことから失業の心配が少なく安定していることや、福利厚生が充実していること、責任のある仕事を任せてもらえることなどがメリットです。
さらに固定給のほかに住宅手当、扶養手当、交通費、賞与、退職金などの手当も厚く、生涯で一番多くお金がもらえるのが正社員となっています。
一方、派遣社員や契約社員は期間に定めのある有期雇用にあたります。
有期雇用かつ直接雇用は契約社員、有期雇用で直接雇用でないのが派遣社員です。
派遣社員の3つの種類
派遣社員として働く場合、まずは派遣会社と雇用契約を結びます。
派遣社員には登録型派遣(一般派遣)、紹介予定派遣、常用型派遣(特定労働者派遣)と3つの種類があるのを知っていますか?
登録型派遣は、人材派遣の約8割を占めるもっとも多い形態です。
一般的に派遣というと、この登録型派遣のことを意味します。
最近注目の紹介予定派遣とは、派遣先に直接雇用されることを前提に派遣する形態のことです。
紹介予定派遣で派遣されると、派遣社員として働く期間は最長6カ月で、派遣契約終了後に本人と派遣先企業が合意した場合、直接雇用で働くことになります。
紹介予定派遣のメリットは、6カ月の間に労働者は「自分に合った会社か」を判断することができ、雇う側は「使える人材であるか」判断できる点。
直接雇用で働ける可能性があることから、同じ派遣社員でも紹介予定派遣を選ぶ人が多いようです。
常用型派遣(特定労働者派遣)は、派遣会社と派遣スタッフが一般の正社員と同様に無期限の雇用契約を結ぶスタイル。
一般派遣では派遣先企業が見つからなければ契約・給料は発生しませんが、常用型派遣は派遣会社の直接雇用となるので派遣先企業がみつからない待機の状態でも給料が発生するという違いがあります。
常用型派遣は、一定のスキルや経験が必要な機械・電気関係の設計やシステムエンジニア、化学関係、デザイナー、営業などスペシャリスト業務が多く派遣契約の中でも求人は希少です。
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契約更新時と契約満了時の派遣社員と契約社員の違い
ひとつの会社で働ける雇用期間の上限は派遣社員も契約社員も3年です(契約社員の中でも高度専門職および満60歳以上では5年以内が同じ会社で働ける上限となっていますが、今回の記事はより一般的な、雇用期間の上限が3年の場合について説明します)。
派遣社員と契約社員では契約更新の頻度と3年後の処遇が異なります。
契約更新の頻度から見る派遣社員と契約社員の違い
派遣社員は、3カ月ごとに契約更新されることがほとんどです。
働きだしてたった3カ月でも、企業側が「いらない」となったら契約は終了。
ひとつの会社で働ける雇用期間の上限は3年とはいうものの、3カ月ごとに更新を行いながらの最大3年ということになるので、雇用は不安定だといえます。
派遣社員として働くと、更新が3カ月と早いため短期間で結果を出さないといけないなどのデメリットがあります。
契約社員の契約更新は半年、1年と企業によってバラバラです。
仕事に慣れたころに契約更新時期がくるので、派遣社員に比べると継続して更新してもらいやすい環境にあります。
契約満了後の処遇からみる派遣社員と契約社員の違い
派遣社員は3年以上同じ職場で働くことができません。
自分が3年以上働きたいと思った場合、または会社側に引き続き働いてほしいと言われた場合は、会社側はその人を正社員や契約社員などの直接雇用にしなければいけません。
もしくは、派遣社員は業務の類似性・関連性がない部署での勤務は可能なので、人事課から会計課へのように課を変えることで同じ会社の派遣社員として働くことができます。
一方、契約社員は3年経って引き続き同じ会社で働きたいと思った場合、契約しなおせば※引き続き働くことができます。
※労働基準法第14条より、「労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年を超える期間について締結してはならない」とあります。以上のことにより、契約社員は3年働くといったん契約は終了となりますが、再締結すれば再び働けるようになります。
5年勤めたら正社員になれる?契約社員の2018年問題
2013年4月に労働契約に関する法律「労働契約法」が改正され、「無期労働契約への転換」などの新しいルールが導入されました。
「無期転換ルール」は、同一の使用者(企業)との間で有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員やパートなどの雇用期間が定められた社員)は無期労働契約への転換を申し込むことができる、というもの。
ここでひとつ注意をしなければいけないのは、5年以上働いていれば有期雇用から無期雇用へ自動で変わるわけではないということ。
無期雇用への転換を希望する場合は、自分で申し込まなければならないのです。
また雇い主は無期雇用の転換を申し込まれた場合、それを拒否することはできません。
「5年働けば、無期雇用へ転換できる」と聞くと、「5年働けば正社員になれる!」ような気がしますよね。
でも実は無期雇用=正社員とは限らないのです。
実際には、無期契約社員といって今までの労働条件のまま期間が無期になっただけか、給与などの条件を一部引き上げて無期契約社員とすることが多いようです。
2018年問題とは
2013年4月に施行された改正労働契約法により、契約社員などの非正社員で、5年以上同じ会社で働き続けた人は2018年4月から無期雇用に転換するよう会社に申し出ることができるようになりました(無期転換ルールまたは5年ルールともいう)。
企業側は、雇用者からの申請があれば、無期雇用への転換に応じなければならないという決まりです。
無期転換ルールを設けることで、雇止めの不安を解消し、雇用の安定を図った制度なのですが、政府の意図に反して、契約社員を含む有期雇用者たちには新たな不安が広がっています。
それが「2018年問題」です。
2018年問題を簡単に言うと、無期転換ルールによって、非正社員がより働きにくい環境になってしまうということです。
例えば、会社側からすれば、正社員よりも低コストで雇用できるのがメリットだった契約社員を無期雇用にするとなると、金銭的負担が増えますよね。
だから現在雇っている契約社員が無期転換ルールの対象者にならないように、契約延長をしない企業が増えるかもしれないのです。
また、最初の契約で更新の上限を5年にするなどして、初めから無期雇用の申請ができない契約を求める企業が増えることも予想されています。
ずっと契約社員として働いていた人にとっては、ようやく更新の心配なく働けるよい制度かもしれませんが、無期雇用を希望した人が働ける場所が減っていくのではないかと懸念されます。
待遇面からみる派遣社員と契約社員の違い
給料は派遣社員の場合、時給制で交通費はありません。
契約社員は月給または年俸制で交通費は支給されます。
月給については、派遣社員は働く期間が限定されていたり、人手が足りず早急に来てほしいなどの理由から、時給を高めに設定してることもあり、契約社員や正社員より高いということがあります。
ですが派遣社員の給料が高いのは一時的なもの。
派遣社員は住宅手当や扶養手当、賞与などの手当がないことも多く、年収で考えると正社員よりはるかに低くなります。
契約社員も住宅手当や扶養手当、賞与などの諸手当はもらえないことの方が多いようです。
また派遣社員と契約社員では雇用主が違うため、相談窓口も異なります。
派遣社員の場合、仕事内容・就業条件の案内、給与の支払い、福利厚生、スキルアップ研修等は就業先企業ではなく派遣会社でサポートしています。
契約社員の場合、仕事内容や待遇について相談したいことがあれば会社に対して直接話しをすることになります。
仕事面からみる派遣社員と契約社員の違い
派遣社員は自分のスキルレベルにあった企業へ派遣されるため、自分のスキル以上のものが求められる仕事は依頼されません。
たとえばコールセンターの受電専門で雇われた場合は電話を受ける・その際に発生する事務作業を行うなど、仕事内容も決まっており契約以外の業務はしてはいけないことになっています。
契約以外の仕事を頼まれた場合は、派遣会社の担当営業に相談すればOKです。
契約社員の場合、営業職や事務職などの括りで広くさまざまな仕事を任されます。
責任者は正社員であることが多く、正社員に比べると仕事内容に制限がある反面、責任がなく気楽にできる面があります。
働くならどっち?派遣社員と契約社員のメリット
派遣社員と契約社員の違いがわかったところで、どちらの形態で働いた方がいいか、それぞれのメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。
派遣社員のメリット
派遣社員として働くことのメリットは、求人が多く、求められるスキルもそれほど高くないことから再就職しやすい点です。
仕事も自分のレベルに応じた内容で限定されるため、残業や休日出勤もほぼなくストレスも少なめ。
このほか、時給や待遇の不満は派遣会社の営業が派遣先企業へ伝えてくれるので自分でいう必要がないところや、更新が3カ月のため辞めやすいところもメリットです。
契約満了後は登録している派遣会社から新しい仕事を紹介してもらえ、自分でいちから探さなくてもいいという良さもあります。
社会保険は、待機期間が1カ月を超えない場合で、同じ派遣会社から次の派遣先を紹介してもらう場合は同じ被保険者資格を使うことができます。
このため退職後、市役所等で国民保険や国民年金の手続きをするなどの面倒がありません。
契約社員のメリット
契約社員のメリットは、正社員ほど高いスキルを求められないため就職しやすい点です。
正社員、契約社員、派遣社員の順番でスキルの高さは必要になります。
契約社員は派遣社員より業務の幅が広く大変ですが、そのぶんやりがいのある仕事ができます。
スキルアップや経験・実績につながるような仕事ができるのもポイント。
経験を積んで正社員登用を目指すこともできますし、契約期間終了後、経験を活かして正社員の職を探すこともできます。
また直接雇用の契約社員にはセミナー参加やミーティングなど、社員と同様にコストをかけて教育してもらえる機会があり、給料をもらいながらのスキルアップが可能。
正社員登用する場合、他社からきた派遣社員より自社で教育コストをかけて育てた契約社員を優先的に正社員にするべきだ、という考えが日本企業にはあります。
そのため実力に圧倒的な差がない場合は、派遣社員より契約社員を正社員にする可能性が高いでしょう。
直接雇用の契約社員は派遣社員に比べると正社員になりやすいこともメリットのひとつです。
非正規雇用で働くなら知っておきたい!待遇面での派遣社員と契約社員のデメリット
派遣社員や契約社員で働くことのデメリットとして挙げられるのが福利厚生の薄さです。
以下の表では適用される制度を正社員と派遣社員・契約社員で比べています。
正社員 | 派遣社員・契約社員 | |
---|---|---|
雇用保険 | 92.5% | 67.7% |
健康保険 | 99.3% | 54.7% |
厚生年金 | 99.1% | 52.0% |
退職金 | 80.6% | 9.6% |
賞与支給制度 | 86.1% | 31.0% |
このほか派遣社員は、直接雇用ではないので社員食堂の料金が割高など、社内の施設や制度を利用できないことがあり疎外感を感じることがあるようです。
正社員じゃなくても大丈夫?仕事面での派遣社員と契約社員のデメリット
「一度派遣社員や契約社員として働くと、再び正社員として働くことが難しくなるのでは?」とはよくいわれること。
その理由として、「派遣社員や契約社員では経験が積めず正社員よりスキルが劣ってしまう」こと、「派遣社員でラクをしてしまうと正社員の仕事がストレスに感じて続かない」ことなどが挙げられます。
こちらの章では、派遣社員や契約社員で働くことの仕事面でのデメリットを紹介しています。
派遣社員で働くことの仕事面でのデメリット
メリットとして派遣の求人は多いと書きましたが、派遣の求人はストレスの多いコールセンターのお客様対応、ノルマの厳しい営業など、人の入れ替えが激しい仕事がほとんどです。
人の出入りが激しいキツイ仕事ですから、せっかく再就職してもすぐに辞めてしまうかもしれません。
次に挙げられるデメリットは、スキルアップができないこと。
派遣社員がスキルアップできない理由は2つあります。
1つは、派遣社員は期間限定で雇われるため、長期的な仕事や責任のある仕事を任せてもらえないこと。
そのため仕事内容が補助的なものだったり、今現在持っているスキルでできる仕事しか与えられないのです。
これでは仕事をしながらのスキルアップは望めませんよね。
イヤな仕事をしなくてもよい代わりに、やりがいも感じられないかもしれません。
2つ目は、会議の出席が認められない、研修に参加する権利がないなど、キャリアアップの機会がないことです。
スキルアップするには自分で時間を作り、自ら投資して行わなければいけません。
ですが、資格取得など本格的にスキルアップしようと思うとけっこうな費用がかかりますよね?
派遣会社によってはスキルアップを支援する制度があるので、そういう機会を利用するとよいでしょう。
たとえばリクルートスタッフィングでは、自宅で手軽にできるインターネット研修のほか、研修センターで行うクラスルーム研修、資格取得支援を行っています。
インターネット研修では、会社で働くにあたって必要な情報セキュリティに関する知識などが、クラスルーム研修では、基本のビジネスマナーやビジネスメールのマナーや書き方が無料で学べます。
資格取得支援は、日商簿記3級対策講座と検定試験がセットになったコースなど、一般の講座料金の平均価格より1/3程度で受講が可能。
このほかにもECCやアビバなどの提携スクールが優待価格で受講できるなど、本格的に学べる環境が整っています。
契約社員で働くことの仕事面でのデメリット
契約社員の仕事上でのデメリットは、正社員とほぼ変わらない仕事をしているのに、正社員と契約社員で扱いが異なることです。
給料や福利厚生のほかに、教育研修の内容に差があったり、社員が受ける研修を受けられないことが挙げられます。
研修内容にどれほどの差があるかは以下の、厚生労働省「平成28年度能力開発基本調査」(調査対象年度は平成27年度)の資料の通りです。
正社員 | 正社員以外※3 | |
---|---|---|
OJT実施率※1 | 59.6% | 30.3% |
OFF-JT実施率※2 | 74% | 37% |
※1.OJT(On the job training)とは、実際に仕事を担当させながらやさしい仕事から難しい仕事へ徐々にチャレンジさせる教育方法。
※2.Off-JT(Off the Job Training)とは、仕事から離れてワークショップ等のスタイルで教育する方法。
※3.正社員以外とは、契約社員やパートなどの直接雇用者。派遣社員を含みません。
派遣社員や契約社員で働くにあたってのQ&A
こちらの章では派遣社員や契約社員で働くことを考えている人が疑問に思うことについて、Q&A形式で回答しています。
- 派遣社員や契約社員に有給休暇はある?
- 派遣・契約社員とも正社員と同様に、雇入れの日から6カ月間継続で勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合10日の有給休暇が発生します。
- 派遣社員や契約社員でも失業保険はもらえる?
- 在職中に雇用保険に加入していた人で、退職日からさかのぼること2年の間に※被保険者期間が12カ月以上あることが条件でもらます。
契約期間満了で退職した場合、給付制限なしでもらえます。※被保険者期間とは、1カ月の間に働いた日数が11日以上ある月をいいます。3月31日退職の場合、3月31日の1カ月前は3月1日です。3月1日から31日の間で20日出勤していた場合、3月は被保険者期間であるといえます。
例:週5日勤務の人であれば、2年の間に12カ月以上、週5日で働いていた月があればOK - 派遣社員から契約社員になることは可能?
- 以下の手順を踏むことで可能です。
まずは現在の雇い主である派遣会社の担当営業に「契約社員として働きたい」旨を相談しましょう。
↓
派遣会社の担当営業は派遣先企業と相談します。
↓
派遣先企業の同意が得られた場合、相談者は紹介予定派遣として新たに契約しなおします。
↓
6ヶ月間派遣社員として働いて6ヶ月後に直接雇用にしてもらいます。 - とりあえず派遣や契約社員として応募するけど、いずれは正社員として働きたい!面接時に言ってもいい?
- OKです。
いずれは正社員として働きたいことを伝えた上で、正社員になるための条件や期間、ほしいスキル、実際に正社員登用された人の割合を面接で確認するとよいでしょう。 - 何歳まで働ける?
- 定年制度があるのは正社員だけです。非正規雇用には定年制度はなく、60歳以降の求人もあります。
非正規雇用とはいえ、採用には即戦力になれる経験やスキルが必要とされるので、派遣や契約で職場を転々とする場合もなるべく同じ業界や業種で転職するほうが後々経験としてのアピール材料になりますので、転職の際には意識するようにしましょう。
派遣社員と契約社員の違いとメリット・デメリットまとめ

ここまで派遣社員と契約社員の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて紹介してきましたが、いかがでしたか?

将来的には正社員として働きたいという気持ちがある人は、契約社員の方がいいのかなと思いました。

派遣社員でもスキルアップのための勉強をすることが大切なんですね。

そうですね。
正社員に比べると、派遣社員と契約社員は手当や将来性などの面で不安が残ります。
仕事面・待遇面から考えて正社員として働くのがベストですが、正社員としての仕事が見つからなくて仕方なく働く人も多いでしょう。
契約社員ならスキルアップのチャンスはありますし、経験を積んで再び正社員にチャレンジすることも可能です。
派遣社員はストレスが少なく働けて自分の時間を有効に使いたい人にはいい働き方。
将来のことを考えて自分で資格取得などの勉強をしながら働くといいですよ。