就活で複数社から内定をもらった時の決め手は?4社内定の就活生が1社に絞った実体験

面接解禁の6月1日が過ぎて、いよいよ新卒生の就活も佳境に入っている方が多いのではないでしょうか。

あと少し頑張れば自分の望む未来をつかめます、最後のひと踏ん張り頑張ってください!

その一方で、すでに内定を勝ち取った方もいらっしゃるかもしれません。

志望企業の内定を獲得された皆様、おめでとうございます!

残り僅かな学生生活を有意義にお過ごしください。

ただ、近年は学生優位の売り手市場ということもあって、内定を獲得した学生さんの中にも、悩みを抱えている人が多いようで…

その悩みは、「複数企業から内定をもらったけど、どの企業に入社しようか決められない」というもの。

傍から見ればなんとも贅沢な悩みですが、当事者にとってみれば大きな問題ですよね。

そこで今回は、複数の企業から内定をもらった場合に、1つの企業に絞るための方法について、詳しく解説していきたいと思います!

また、4社から内定をもらった大学生Aくんに、どのように会社を選んのだかインタビューしましたので、そちらも是非参考にしてください!

就活経験者Aくんのインタビューをすぐに読む

複数企業から内定をもらって悩んでいる学生は、意外と多い!

就活で内定を複数もらった時の対処法

それではまず、どれくらいの学生が複数企業から内定をもらっているのかを見ていきましょう。

まず、2017年に行われた株式会社リクルートの調査によって、2017年8月1日時点での複数内定取得者は、内定者全体の64.2%(そのうち、2社の内定を獲得した人が30.4%、3社以上の内定を獲得した人が33.8%)ということが明らかになりました。

内定をもらった就活生の6割以上が、「内定を複数もらってしまって、どの企業に入社するか迷う…」という贅沢な悩みを抱えていたことがわかります。

また、2018年6月に行われた株式会社ディスコの調査によると、2018年6月1日時点での内定率は65.7%で、平均内定社数は2.0社でした。

2018年6月1日時点の内定率と平均内定社数は、昨年同時期に行われた調査結果を上回っているため、19卒以降の就活生は、更に複数内定を獲得できる人が多いだろうと考えられます。

しかし、いくら多くの企業から内定をいただいたとしても、入社出来る企業は1つしかありません。

そのため、「複数の企業から内定をもらったけど、入社先を決められない!」、「1つの企業に絞るまでの過程を知りたい!」という悩みを抱える学生さんが続出するわけです。

「情報収集」と「自己分析」を行って、入社先を決めよう!

そこで、複数内定をもらって悩んでいる学生さんには、2つの行動を取ることを勧めます。

それは、「情報収集」「自己分析」です。

これだけ聞くと、「情報収集はまだわかりますが、自己分析はわざわざ内定後にやり直す必要ありませんよね?」と考える人もいるかもしれませんね。

それは全くの誤解です。

むしろ、内定をもらった直後こそが、最も自己分析が必要だと言えます。

しかし、自己分析する前に、考えるための材料を集める必要があるため、まずは情報収集の説明から入りましょう。

入社先を決定するために、集めるべき情報8選

「内定を貰う前に、聞きたいことは全部聞けました!」という学生さんも、もう一度自分の胸に問いかけてみて下さい。

  • その会社のどんな部署でどのように働きたいか、きちんとイメージできていますか?
  • 会社のいい面だけではなく、悪い面も理解できていますか?
  • 働き始めたら、やりがいだけではなくお給料やお休みも大事です。
    会社の年収や福利厚生について、きちんと聞けましたか?

不安を抱えたまま入社するのはよくありません。

きちんと適切な情報を集めて、最終判断の材料にしましょう。

入社先を決める前に集めるべき情報としては、以下のようなものがあります。

  1. 仕事内容

    それぞれの職種がどのような仕事をしているのか、仕事にどのようなやりがいがあるのかを理解しておきましょう。

  2. 扱っている商材やサービス

    自分が将来働くかもしれない会社が提供する商材やサービスに愛着が持てなければ、仕事をしていても面白くないはずです。
    もう一度細部まで調べ直しましょう。

  3. 社風や同期の雰囲気

    企業の風土と自分の性格が合うか合わないかは、自分の仕事のパフォーマンスにも大きく影響を及ぼすため、絶対に情報を集めるべきです。

  4. 業界の将来性や企業の安定性

    もし自分が選んだ会社が入社してすぐに倒産してしまったら、路頭に迷ってしまいますよね。
    入社してからも長く働き続けたい、定年まで一つの会社で働きたいと考えている人は、絶対に抑えておくべきポイントです。

  5. 給与

    少し聞きにくいかもしれませんが、1日の3分の1以上の時間を投資して働く以上、お金の問題は非常に大切です。
    平均年収だけではなく、昇給のペース、ボーナス、昇給・昇進に至る人の割合なども、聞けたら聞いておきましょう。

  6. 福利厚生

    寮、社宅、家賃補助などの制度は、手取り年収に大きく関わってきます。
    子育てと仕事を両立させたい方は、産休制度や育休制度、時短勤務なども聞いておくと良いです。

  7. 休日・勤務時間

    年間休日数、長期休暇、有給取得率などを聞いておくといいです。
    もし直接的に聞くのがためらわれたら、「旅行が趣味なのですが、働き始めてからはどれくらい旅行に行ってらっしゃいますか?」と聞いてみましょう。
    休みの取りやすい会社であれば、「うちの会社は休みが取りやすいから、この間は同期と〇〇に行ったよ~」と社員さんが優しく教えてくれるはずです。

  8. 勤務地

    「どの場所で働くことになるか」は、将来家庭を持ったときかなり重要になってきます。
    あまりにも辺鄙な場所に飛ばされてしまったり、転勤が多すぎたりすると、家庭を持ったとしても単身赴任することになるかもしれません…

入社先を決めるためにすべき、情報収集の方法3選

さて、ここまでで集めるべき情報の種類について解説してきましたが、その情報をどのように集めれば良いのかを知っていなければ、実際に情報を集められませんよね。

情報収集の手段としては、「書籍やインターネットで調べる」「OB・OG訪問をする」「内定者懇親会に参加する」という3つがあります。

それぞれについて詳しく解説していきましょう。

1. 書籍やインターネットで調べる

パソコンで調べる男性

まず1つ目の方法は、書籍やインターネットで調べる、というものです。

業界地図就職四季報といった書籍には、業界や企業の将来性、3年後離職率、平均年収、有給消化率などの情報が載っています。

業界対策本(例えば「〇〇業界の動向とカラクリがよ~く分かる本」出版社 秀和システム)を読めば、業界の今後の展望や将来性について学べるでしょう。

また、企業HPVorkersなどの口コミサイトを検索すれば、実際の仕事内容や扱っている商材・サービス、そして実際に働いていた人の意見を知ることができます。

ただ、書籍やインターネットを調べるだけでは、実際に働いている社員さんの生の声を聞くことはできませんよね。

そこで、書籍やインターネットで情報を集めたあとは、次のような行動を取ることを勧めます。

2. OB・OG訪問をする

男性と話す女性

会社に就職するにあたって、書籍やインターネットで集めた情報だけでは不安な場合、その企業の人事の社員さんにその旨を伝えて、OB・OG訪問をさせてもらいましょう。

自分が不安に感じていることを質問し、先輩社員に答えてもらうことで、「その企業で働く」ことへの不安が少しずつ取り除かれて、実際に働いているイメージが膨らむはずです。

社員さんの話はインターネットの情報と比べて信憑性が高いので、より正確な情報を集める、という狙いでOB・OGの方に会わせていただくのもいいでしょう。

また、貴重なお時間を先輩社員に割いてもらう以上、OB・OG訪問を実りある時間に出来るように、前もって質問を考えた状態で臨むように心がけて下さい。

OB訪問のやり方や流れを徹底解説!アポ取りやお礼メール、アプリの活用法を紹介

3. 内定者懇親会に参加する

ビールで乾杯する様子

内々定の通知を受けたあとは、内定者懇親会という集まりに呼ばれます。

この集まりは、将来の同期との仲を深めるという目的で開催されるのですが、企業の情報を得る手段としても有効です。

なぜなら、懇親会で集まるのは将来同期になるかもしれない学生ばかりであるため、「内定者懇親会」は、自分はこの人達とうまくやっていけそうか、会社の雰囲気と合うか、ということを肌で感じられる絶好の機会となるからです。

また、懇親会ではお酒を振る舞われることが多く、先輩社員もたくさん参加しているため、先輩社員から「会社のぶっちゃけトーク」を引き出すこともできます。

入社するか否かを決定するのは、その企業の内定者懇親会に参加したあとでも遅くないので、可能な限り出席するようにしましょう。

入社先を決めるために、「自己分析」が必要な理由

OB・OG訪問や内定者懇親会を通して、情報を十分に収集したあとは、「自己分析」を繰り返していよいよ入社先を決定します。

ここで、自己分析の具体的な方法論を話す前に、冒頭の疑問に戻って、「そもそも内定後になぜ自己分析をする必要があるのか」という質問にお答えしましょう。

その答えは、「自分という人間のことを深く理解していなければ、最後の決断をすることができないから」です。

考えてみてほしいのですが、いくら情報を集めたところで、その情報が秩序立っていなかったり、自分の中で情報の優先順位がついていなかったりすれば、膨大な情報を持て余してしまって、決断することができませんよね?

  • 自分はどんな仕事にやりがいを感じるのか
  • 自分は仕事を通してどのような価値を社会に提供したいのか
  • そもそも自分はどのように生きていきたいのか

このような問いに正面から向き合って「自分が企業を選ぶ際に重視する情報は〇〇である」と言語化することが大切なのです。

そうすることで、膨大な量の情報が整理され、情報に優先順位がつき、後々スムーズに決断できるようになります。

また、この際にいちばん大切なのは、「自分の本音と向き合う」ということ。

面接の際には「成長できるなら忙しくて全然大丈夫です!」「勤務地には全くこだわりありません!」と言っていても、心の底では「忙しすぎると、将来家族との時間が過ごせなさそうで嫌だなあ」「転勤が多すぎると、人生設計を立てづらいなあ」と思ってはいませんか?

もしそんな人が、終電帰宅が当たり前で、頻繁な全国転勤がある企業に勤めた場合、将来絶対にミスマッチを起こすでしょう。

そうならないためにも、「仕事へのやりがい!」「圧倒的な自己成長!」「尊敬できる仲間!」などの、面接で散々言っている綺麗事だけではなく、「勤務地」「給料」「福利厚生」「ネームバリュー」などの生々しい自分の本音とも向き合っておく必要があります。

入社先を決めるためにすべき、自己分析の方法3選

ここからは、具体的な自己分析の方法論に入っていきます。

入社先を決めるために行うべき自己分析は、つぎの3つの段階に分かれています。

  1. それぞれの企業のメリット、デメリットを視覚化する
  2. 判断項目に優先順位をつける
  3. 自分の本心と向き合って決断する

それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。

1. それぞれの企業のメリット、デメリットを視覚化する

まず第一段階として、「内定をもらった企業それぞれのメリット、デメリットを視覚化する」ことから始めましょう。

具体的には、それぞれの企業について、自分が重要だと思う情報(仕事内容、扱っている商材、給料など)を表や箇条書きといった形でまとめるといいです。

そうすることで雑多な情報が分類、視覚化され、非常にわかりやすくなります。

ちなみに、表にまとめる場合は、縦軸は判断項目で横軸は企業名、という形でまとめると良いです、これを図示すると表1のとおりです。

(表1)

A社 B社
仕事内容
企業、業界の安定性 X
社風 X
給与
勤務地

2. 判断項目に優先順位をつける

第二段階では、「判断項目に優先順位をつける」ことを意識して下さい。

なぜなら、「どの項目も大切!」と判断項目に優先順位をつけずに思考停止してしまうと、以降の決断がスムーズに行かなくなるからです。

たとえば、上の表をみてみると、どちらの会社も◯2個、△2個、X 1個となっているため、単純に比較するだけではどちらか一方へ絞ることができません。

そこで、判断項目に優先順位をつけることによって、絞り込むことができます。

たとえば、仕事内容を最優先する人であれば、仕事内容に◯がついているA社を選ぶでしょうし、仕事へのやりがいは二の次で、給与や社風を重視する人であれば、B社を選ぶでしょう。

このように、A社とB社の両方から内定をもらった人が2人いた場合でも、お互いの優先順位の違いから、最後の決断が変わってくることもあるのです。

3. 自分の本心と向き合って決断する

最後の第3段階では、いよいよ「自分の本心と向き合って決断する」ことになります。

ここまで自分が集めた情報や、その情報につけた優先順位に基づいて決断しますが、その方法は2つあります。

1つ目は、「自分の最も重視することが一番達成できる企業を選ぶ」という方法です。

たとえば、表1の条件で「給与」を最も重視する人が決断するのであれば、より給与の項目で優れているB社を選ぶことになります、他の項目は考慮しません。

2つ目は、「それぞれの企業の評価をポイント化して比較する」という方法です。

この方法ではまず、表1のように企業のメリット、デメリットを視覚的にまとめます。

続いて、各項目を「◯なら3点、△なら2点、X なら1点」と3段階で評価し、すべての項目の得点を足し合わせた値で、複数の企業を比較します。

また、「一番優先順位が高い項目は点数を5倍に、二番目に優先順位が高い項目は点数を4倍に…」と工夫をすると、優先順位を考慮した上で定量的に比較できるため、より適切に評価することができます。

これを表1に当てはめると、表2のようになります。

(表2)

A社 B社
仕事内容(優先度1) ◯ 5×3=15 △ 5×2=10
企業、業界の安定性(2) △ 4×2=8 X 4×1=4
社風(3) X 3×1=3 ◯ 3×3=9
給与(4) △ 2×2=4 ◯ 2×3=6
勤務地(5) ◯ 1×3=3 △ 1×2=2

この場合は、A社の合計得点は33点、B社の合計得点は31点なので、A社に軍配が上がりました。

入社先を決めるときに、絶対にやってはいけないこと

「ちょっと待った」をする男性

複数の内定先から1つの入社先を決めるためには、「情報収集」と「自己分析」をすべきだとお伝えしてきました。

ここからは、入社先を決める上で気をつけるべきこと、絶対にやってはいけないことを2つ解説していきますので、反面教師にしながら読み進めて下さい。

1. 親や知人に決定を委ねる

1つ目は、「親や知人に決定を委ねてしまう」ことです。

なぜなら、もし入社先を自分の意志で決めていなかったら、仕事をする上で嫌なことや辛いことがあったときに「あの人がこの企業に入れって言ったからこんな思いを…」と言い訳ができてしまうからです。

入社先を決めるということには、自分の今後40年の人生がかかっているのですから、きちんと自分の頭で考えて、今後の人生に責任を持つという覚悟で決断するようにして下さい。

2. 口コミサイトを鵜呑みにする

2つ目は、「口コミサイトを読み漁る」ことです。

その理由としては、Vorkersなどの口コミサイトには、ネガティブな情報が書かれていることが多く、企業の姿を正しく反映しているとは言えない、ということが挙げられます。

とはいえ、口コミサイトには給与や福利厚生など、社員さんには直接聞きにくい情報が記載されているため、情報収集の手段として有益なことは確かです。

口コミサイトを読み漁って情報に翻弄されるのではなく、参考程度の閲覧に留めることで、上手に口コミサイトを活用しましょう。

大手企業4社から内定を獲得した、就活経験者Aくんの体験談

さて、ここまでの文章を読んで、皆様はどのような感想をお持ちでしょうか?

「なるほど、入社先を1つに決める方法がバッチリ分かりました!」という人もいれば、

「抽象的な内容に終始していて、なんかしっくりこない」という人もいるかもしれません。

そこでここからは、大手企業4社から内定をもらい、入社先を1つに絞るという経験をされた、就活経験者Aくんの実際の体験談を紹介します。

Aくんのプロフィール
Aくん

  • 志望業界
    B to Bメーカー、インフラ(電力、ガス、通信、物流)
  • 学歴
    関西の某国立大学文学部4年(19卒)
  • 大学での活動
    音楽サークル(役職あり)、アルバイト(飲食店、塾講師)
  • 就活の軸
    「ものづくりを通して人々の生活を広く支えられること」
    「海外で活躍できるチャンスがあること」
    「会社や社員さんの雰囲気と自分の雰囲気が合うこと」
  • 内定先
    素材メーカー、中間部品メーカー、機械メーカー、物流会社の計4社
新山 保

Aくん、本日はよろしくお願いします。

大学生 Aくん大学生 Aくん

はじめまして、Aと申します、こちらこそよろしくお願いします。
私は19卒の就活を経験しまして、最終的には4社から内定をいただくことができました。
内定をいただけた企業様はどれも素晴らしい企業様でしたので、1社に絞るのには大変苦労したのですが、今では「自分の納得いく決断ができた」と自負しています。
私の体験談が、一人でも多くの就活生の皆様の参考になればと思います。

1. 仕事へのやりがい、待遇を基準に4社から3社へ絞る

新山 保

それではこれから、Aくんが4社から1社に絞り込むまでの過程を伺っていきたいのですが、まず4社から3社に絞った基準を教えてください。

大学生 Aくん大学生 Aくん

はい、わかりました。
私は、就活解禁となった3月当初こそ、B to Bメーカーとインフラを併願していたのですが、就活が進むにつれて、形のある商材を有している「メーカー」に、より興味をもつようになりました。
そのため、素材メーカー、中間部品メーカー、機械メーカーの3社は第一志望群だったのですが、物流会社のみ第2志望群の中の1社でした。

新山 保

確かに、物流会社だけ業界が違いますね。

大学生 Aくん大学生 Aくん

そこで、仕事へのやりがい、年収、福利厚生などの待遇を総合的に考慮して、まずは物流会社様の内定を丁重に辞退することにしました。

2. 商材への興味、勤務地を基準に3社から2社へ絞る

新山 保

続いて、3社から2社に絞った基準を教えてください。

大学生 Aくん大学生 Aくん

私が内定をいただいた3社のメーカーは、B to Bという共通点こそあれど、製品の仕様は少しずつ違っていました。
素材メーカーは川上、中間部品メーカーは川中、機械メーカーは川下(最終製品)の製品を作っているのです。

新山 保

たしかにそうですね、営業スタイルやビジネスモデルにも違いがありそうです。

大学生 Aくん大学生 Aくん

そこで私は、「どの段階の形ある商材に自分は惹かれるのか」という観点で、改めて考え直すことにしました。
その結果、素材では最終製品に与えている影響が見えづらく、自分の仕事が社会の役に立っているという実感を持ちにくいのでは、と考えるようになったのです。
また、素材メーカーは他2社と違って工場が全国に点在していたため、将来の人生設計が立てにくいとも感じました。

新山 保

「どのような仕事をしたいか」という視点に加えて、「どのように生きていきたいか」という視点も持ち合わせていたんですね。

大学生 Aくん大学生 Aくん

はい。ですので仕事へのやりがい、勤務地という観点から、素材メーカー様も丁重に辞退することに決めました。

3. 定量的な総合判断を基準に2社から1社へ絞る

新山 保

いよいよ2分の1というところまで来ました、ここからはどのような基準で絞ったんですか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

実は、2社まではなんとか絞れたのですが、ここからは本当に迷ってしまったんです。
中間部品メーカーも機械メーカーも、おそらく自分のやりたいことはできると考えたので。

新山 保

確かに、自分の将来に大きな影響を与える決断ですから、それは迷いますよね…
そこから、Aくんはどのように行動されたんですか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

そこで、まずは中間部品メーカーと機械メーカーの内定者懇親会に参加しました。
内定者懇親会に参加して、同期や社員さんの雰囲気を肌で感じることで、「自分は本当にこの会社で40年間働いていけるのか」ということを見極めようと思ったのです。
また、入社するにあたって不安なことがある旨を人事の方に伝えて、OB・OGの方と1対1で話す機会も設けていただきました。

新山 保

情報収集のために、かなり主体的に動いてらっしゃったのですね。

大学生 Aくん大学生 Aくん

そして、内定者懇親会やOB・OG訪問を通して得た膨大な量の情報を活用するために、その情報を整理、評価することに着手しました。
具体的には、自分が働く上で重視する項目5つを表にまとめて、項目の優先順位をつけ、それぞれの企業を1点から5点の5段階で評価していました。

新山 保

Aくんの就活の軸の優先順位は、具体的にはどのようなものだったのですか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

私の就活の軸の優先順位は、「会社の雰囲気→仕事のやりがい・商材への興味→企業の安定性→海外勤務の可能性→給料・福利厚生」でした。
また、優先順位の高い順から、得点に5,4,3,2,1を掛け合わせるようにしました。
これをまとめた表が、以下の表3です。

(表3)

中間部品メーカー 機械メーカー
会社の雰囲気(優先度1) 5×5=25 5×5=25
仕事のやりがい・商材(2) 5×4=20 4×4=16
企業の安定性(3) 5×3=15 4×3=12
海外勤務(4) 5×2=10 3×2=6
給料・福利厚生(5) 3×1=3 4×1=4
新山 保

それでは、一番上から詳しく解説お願いします。

大学生 Aくん大学生 Aくん

まず、会社の雰囲気はいずれの企業もバッチリ自分と合っていました(両方5)。
穏やかかつ仕事に対して真摯な社員さんがどちらの企業にも多く、この先輩たちと働きたい、と強く思ったことを覚えています。

新山 保

やはり、会社の雰囲気は大切ですよね。
仕事のやりがい・商材への興味についてはどう比較しましたか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

仕事のやりがい・商材への興味に関しては、川上になればなるほど事業の裾野が広くなる、かつ部品であれば素材と比べて最終製品に与える影響も見えやすい、と考えたため、中間部品メーカーに軍配が上がりました(中間部品5、機械4)。

新山 保

企業の安定性はどう評価したのですか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

企業の安定性に関しては、それぞれの会社の過去5年間の売上高営業利益利益率といった数値を有価証券報告書で確認しました。
その結果、中間部品メーカーの方が、より安定性があるという結論に至りました(中間部品5、機械4)。

新山 保

IR情報を有効活用されたというわけですね。
海外勤務の可能性はどうでしょうか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

海外勤務の可能性に関しては、内定者懇親会やOB・OG訪問を通して積極的に情報を仕入れました。
その結果、中間部品メーカーは海外志向が非常に強い一方で、機械メーカーは部門によっては海外にいけないこともある、ということがわかりました(中間部品5、機械3)。

新山 保

確かに、海外勤務の可能性については、実際に働く人の声を聞いてみないとわかりませんよね。
最後に、給料や福利厚生の比較について教えてください。

大学生 Aくん大学生 Aくん

給料・福利厚生について、小心者の私はあまり突っ込んで聞けませんでした 笑。
ただ、周りの内定者がしていた質問をさりげなく聞いていた限り、機械メーカーのほうがお給料は良さそうでした。
ただ、中間部品メーカーも自分の納得いく水準はもらえる印象を受けましたね(中間部品3、機械4)。

新山 保

5つの優先順位の評価が終わりました、それぞれの点数はいかがでしたか?

大学生 Aくん大学生 Aくん

表3の各項目の数値を足し合わせると、中間部品メーカーは73点機械メーカーは63点という結果になり、中間部品メーカーがより高い点数を獲得しました。
以上の長い長い過程を経て、私は中間部品メーカーへの入社を決断しました。

新山 保

とても丁寧にお話しいただき、ありがとうございます。
複数の内定企業から1社の入社先を選ぶことは、とても大変ですよね…

大学生 Aくん大学生 Aくん

本当に大変でしたし、悩みましたね 笑。
できるだけ詳しいところまで突っ込んで話したつもりなので、「入社先を決められない!」と悩んでいらっしゃる方が、少しでも私の体験談を参考にしてくださったら嬉しいです。

新山 保

Aくん、本日はありがとうございました!

大学生 Aくん大学生 Aくん

こちらこそ、長い話にお付き合いいただき、ありがとうございました。

複数内定をもらって悩んでいる学生さんに伝えたいこと

新山 保

ここまで、複数の内定先から入社する1社を絞るための方法について、詳しく説明してきましたね。「内定を辞退するときの正しい断り方」も参考にしてくださいね。

菊地 絵理奈

はい。
Aくんの体験談も聞くことができて、より理解が深まりました。

新山 保

そうですか、それは良かったです。
さてここからは、複数内定をもらって悩んでいる学生さんに向けて、3つのメッセージを送りたいと思います。

まず1つ目は、「何かを決断するということは、何かを捨てるということと同じだ」ということ。

おそらく皆さんは、「仕事にやりがいを感じられて、社風が自分の性格とバッチリ合って、20代で1000万稼げて、でも労働時間はそこまで多くなくて、東京のおしゃれなオフィスビルで働けて、海外で働くチャンスが多くて、しかも赴任先は都会ばかりで、でも国内転勤はなくて、合コンでモテて…」という企業に就職したいと考えているでしょう。

ただ残念ながら、そのすべての願いをかなえることは不可能です。

ですので、自分が最も重視することは絶対に譲らずに、それほど重視していないことはある程度妥協する、捨てるということが大切になってきます。

2つ目は、「自分の頭で納得のいくまで考えて、ゆっくりでもいいから納得の行く結論を出してほしい」ということ。

先程書いたように、自分の入社先を他の人に決めてもらう、他の人の意見に流されるということは本当によくありません。

きちんと自分という人間に向き合って、「自分は何をしたいのか」「どう生きていきたいのか」を模索しながら、曲がりなりでもいいので一つの結論を出して下さい。

そうすれば、自分の決断に責任を持てますし、仕事を通して何か困難に直面しても、「あのときこの会社を選んだのは自分だし、頑張ろう」と前向きに捉えられるはずです。

3つ目は、「一度決めたら、迷いは捨てて自身の決断に自信を持ってほしい」ということ。

最後まで自分と向き合って、悔いのない決断をしたあなたなら大丈夫です、あとはどうにかなるので、後ろを振り返らずに、前だけを見ましょう。

大谷 翔太

わかりました、ありがとうございます。
先生からのメッセージを胸に、今日から内定先の絞り込みに入ろうと思います!

菊地 絵理奈

私も、どの会社に入社しようか迷っていましたが、「情報収集」「自己分析」をして、自分の納得のいく決断ができるように頑張ります!

新山 保

2人とも、頑張ってくださいね。
大谷くんと菊池さんだけではなく、複数内定をもらって悩んでいる学生さん全員が、納得のいく決断ができることを願っています。

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