会社を辞められない

上司に会社を辞めると伝えたのに、退職の手続きをしてもらえず辞められない場合、どうしますか?

我慢して働き続ける?無断欠勤でバックレる?

どちらもあまりよい方法とは言えません。

今回は、

  • 上司に引き止められて退会社を辞められない場合の対応方法
  • ブラック企業を退職できない場合にすること
  • 給料の未払い分はどうなる?
  • 懲戒解雇にされた場合、休職中に退職する方法

など、退職を拒否された場合、どのような行動をとったらよいかをお伝えします。

池上 彰子

会社には就業規則というものがありますが、民法上では、2週間前までに会社に退職の意思を告げれば辞めることができるんですよ。

坂本 勇治

そうなんですか。
じゃあ、退職を認めないのは法律違反?

池上 彰子

そのとおり。
退職を認めないということは、日本国憲法第22条の「職業選択の自由」を奪うことになります。
だから、誰でも会社を辞めることはできるんです。

坂本 勇治

法律で定められていることとはいえ、一旦引き止められると辞めにくいなあ。

池上 彰子

確かに、そうなんですよね。

  • 辞めたら賠償金を請求するって言われたけど、本当に請求されるの?
  • 退職を認めてもらえない場合、どこか相談できる場所はある?
  • 休職中だけどそのまま退職したい場合、どうしたらいい?

など、会社を辞める権利があることはわかっているけれど、どうしたらいいかわからないことを解決しましょう。

坂本 勇治

お願いします!

引き止めフレーズに惑わされない、退職の意志を固めよう!

会社を辞めると上司に伝えた際、「引き止められて辞めづらくなってしまった」などということがないように、まずは退職の意志をしっかりと固めましょう。

上司の引き止めフレーズに対しては以下のように考えるとよいでしょう。

  • 「後任が決まるまで辞めないでほしい」

    その場しのぎで言っているかも。
    明確な期限があり、あなたが納得できるのであれば待ってもOKです。

  • 「残業時間が長い」など退職理由に対して「改善する」と言われる

    具体的な対応策がなく、信用できないと感じた場合は退職へ。

  • 「君がいないとプロジェクトが進まない」

    本当に優秀な人に言っていることもありますが、ここは心を鬼にして、他の人材を育てるのが面倒で言っていると思いましょう。
    嬉しい言葉ではありますが、辞めたいという気持ちが本物なら退職へ。

  • 「責任感がないのでは?その調子では他の会社でも勤まらないよ」と自分のせいにされる

    辞める理由が明確であれば気にせず退職しましょう。
    再就職先を慎重に探せば同じことにはなりません。

  • 「辞めるなら賠償金を請求してやる!」

    会社を辞めるだけで賠償金を請求された事例はありません。
    脅しの度が過ぎる場合は、後に相談することも考えて記録・録音しておきます。

部下に嫌味を言う上司

上司の引き止めを断ってもなお退職が認められないようであれば、相談する相手を変えます。

人事部や、人事の権利がある人、信頼できる先輩に相談するとよいでしょう。

それでもダメな場合は、辞める2週間前に退職願を会社に提出します。

民法第627条第1項
「期間の定めのない労働契約については、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れから2週間を経過することによって終了する」

つまり民法上では2週間前に会社に報告したら辞められるということ。

「退職“願”は退職を希望するものだから拒否できる、退職“届”でなくては退職を宣言したことにならない」という人もいるようですが、一般的に自己都合で退職する場合は「退職願」、会社都合で退職する場合は「退職届」、役職のある人と公務員は「辞表」ということになっています。

ですから「退職願」でもOK。

どうしても会社を辞められない場合は、最終手段として辞める2週間前に退職願を会社に提出しましょう。

サービス残業やパワハラに疲れた…ブラック企業で退職を拒否されたら

会社を辞めたいと言ったら「辞めるなら残りの給料は払わない」と脅されたり、「退職は半年前に申請すること」などめちゃくちゃな就業規則があったりする場合、あなたの勤めている会社はブラック企業かもしれません。

うつ病や過労死が問題となっているブラック企業。

早く辞めるに越したことはありませんが、なかなか辞めさせてもらえないのもブラック企業の特徴と言えます。

辞めさせてもらえない、上司が怖いからといって我慢して働き続けるのはとても危険です。

  • 辛いのは今だけ。会社の業績が上がればもう少しラクになるはず
  • 一緒に働いている人がいい人だから辞められない
  • 新卒で入社したためにその環境が当たり前だと思っている(ブラックに気づかない)
  • 今の時代、どこの会社もある程度はブラックだからしかたない

こんな気持ちは捨ててしまいましょう。

ブラック企業の環境が、急に改善されることはありません。

一緒に働いている人も、そのうち辞める可能性があります。

おかしいと思うことが続くようなら、証拠を集めて辞める準備をしましょう。

ブラック企業を証明する証拠の集め方

  • 応募条件と違う

    給与が条件より低かったり、正社員の募集だったのに契約社員として働かされているなどの場合です。
    自分が見た求人情報、雇用契約書、就業規則、給料明細を集めます。

  • 長時間労働、サービス残業

    タイムカードと労働時間のメモ(相違している場合が多い)を確認しましょう。
    タクシーのレシートや、「遅くなる」「まだ会社?」など家族や友達とやり取りしたメールやラインも保存しておきます。

  • パワハラ、セクハラ

    ボイスレコーダーで録音し、叱責・脅迫めいたメールを転送・保存します。
    録音が難しい場合は、日付・誰が・どこで・何を言って・何をしたか(5W1H)を具体的に書いておきます。

  • 長時間労働やパワハラですでに体調を崩している

    パワハラやいじめがひどく会社に責任を問う場合、証拠になるので診断書をもらいます。
    診断書があれば休職も可能です。
    心療内科の診察料は、地域や病院によって異なりますが、大体3000円~6000円。
    診断書も地域や病院によって差はありますが2000円~5000円でもらえます。

ブラック企業の「使い捨て」雇用のおかげで、将来に希望を持てない若者が増えているのだそう。

結婚しない(できない)若い人が増えたり、少子化の要因にもなっています。

働き続けても何もよいことはありません。

明るい未来のためにも、早くブラック企業を抜け出しましょう!

勝手に辞めたら懲戒解雇?脅し文句に負けないで!

離職率の高いブラック企業。

せっかく入った人材を手放すわけにはいきません。

そこで、辞めたいと言った社員には適当なことを言って脅すのです。

脅し文句とわかっていても、本当にされたらどうしよう?と不安になってしまう気持ちもわかります。

でも、脅し文句は所詮脅し文句に過ぎません。

全く気にしなくていいのです。

パワハラの証拠になる、と録音でもしながら聞き流しましょう

「勝手に辞めたら賠償金を請求するぞ!」

契約違反(有期雇用契約の途中での退職、バックレ等)があった場合、損害賠償責任が発生する可能性はあります。

しかし裁判例上、労働者の責任が認められた事例はほとんどありません。

何に対しての賠償なのかの解釈が難しいこと、バックレで辞める人が意外と多いことから、いちいち賠償請求してられないというのが実情です。

勝手に会社を辞めたという理由で裁判を起こしたところで、企業側が勝てる見込みはほぼなく、時間とお金のムダ。

よって、よほど辞める側に問題がない限り損害賠償請求はされません

また、「退職は半年前に申請すること。半年未満で退職を申請した場合は違約金として10万円を請求する」などという就業規則があったとしても、払う必要はありません。

労働基準法第16条
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」

これは、賠償予定の禁止といって、契約時に◯◯したら罰金などという規則を入れてはいけませんという意味。

よって、上記のような就業規則はもともと無効なのです。

「勝手に辞めるなら残りの給料を払わないからな!」

労働基準法第24条により、使用者は労働者が働いた分の給料を支払う義務があります。

よって、賃金を払わないのは法律違反。

バックレた会社とやり取りする勇気があるなら、未払い分の請求も可能です。

「勝手に辞めるなら離職票を出さないぞ!」

離職票は会社を辞めてから10日以内に会社から発行されるもので、失業保険をもらうために必要です。

離職票がないと、失業保険はもらえません。

会社が離職票を発行しないのは雇用保険法第七条に違反します。

退職後、10日経っても離職票が届かなければ人事部などへ電話する、メールで催促するなど、自分でできる人は自分で催促してみましょう。

自分で連絡をするのが怖い人は、ハローワークで相談します。

するとハローワークから会社へ催促してもらえます。

「勝手に辞めるなら懲戒解雇にしてやる!」

懲戒解雇になった場合、退職金はもらえません。

また、懲戒解雇になったことを履歴書に書かなければいけない義務があり、懲戒解雇のことを書かないのは違法行為となります。

懲戒解雇のことを隠していたことがバレると、再就職先を解雇されることもあります。

かと言って、懲戒解雇と書くと「懲戒解雇されるなんてよほどのことをしたんだな」と思われ、まず雇ってもらえません。

懲戒解雇は一生ついてまわるもの。

会社を辞められるなら何でもいいや、などと思って懲戒解雇をそのままにしてはいけません。

懲戒解雇になる可能性のある行為は、2週間以上の無断欠勤・横領・売上金の使い込み・情報漏えい・殺人や強盗などの刑事事件を起こした場合など。

よほどのことがない限り懲戒解雇にすることはできないのです。

本来ならば会社を辞めるくらいで懲戒解雇にはならないのですが、懲戒解雇にされた場合は所定の機関へ相談し、懲戒解雇を取り消してもらいましょう。
NPO法人労働相談センター

賠償金も懲戒解雇も単なる脅しだとわかったら、思い切って退職希望日の2週間前に退職願を提出します。

直接渡す勇気がない人は郵便で退職願を出してもいいでしょう。

※郵送の方法は、「会社を辞める方法」の「リスクは承知で明日にでも辞めたい!今すぐ辞めたい人ができること」を参照。

どうしても辞められない場合は総合労働相談コーナーで相談を

上司のパワハラでどうしても辞められない、離職票の退職理由が「自己都合退職」ではなく「懲戒解雇」になっていた、など自分ひとりでは解決できないと思ったら、総合労働相談コーナーへ行きましょう。

総合労働相談コーナーとは全国の労働局、労働基準監督署内などの380箇所に設置されている施設のこと。

労働局は、労働基準監督署の上部機関で厚生労働省の地方支分部局の一つです。

国の機関で、全都道府県にそれぞれひとつ設置されています。

労働局では、事業主と労働者との間に労働関係の紛争(労働トラブル)が発生した場合に、その紛争の解決のために必要な助言や指導、あっせん(裁判所の調停のようなもの)を行っています。

ちなみに、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社を取り締まる機関。

厚生労働省の下に労働局、その下に労働基準監督署があります。

総合労働相談コーナーでは、退職させてもらえないという相談のほか、職場における嫌がらせやパワハラなどあらゆる分野の労働問題に対応しています。

相談内容によって、労働基準法などの法律違反の可能性がある場合は、行政指導の権限を持つ労働基準監督署へ取り次がれます。

裁判所、法テラスなどの紛争解決機関の情報も教えてもらえますよ。

総合労働相談コーナーのほか、NPO法人労働相談センターでは、電話やメール、対面での相談が可能です。

休日出勤やいじめ、嫌がらせ、サービス残業など労働に関する幅広い相談に対応。予約が必要ですが、弁護士に相談することもできます。

休職中にそのまま会社を辞めたい場合

すでに体調を崩して休職中だけど、復職せずに退職しようと考えている人が会社を辞める方法を紹介します。

退職の意志が固まった時点で、直属の上司に電話またはメールで復職できない旨を伝えます。

直属の上司には言いにくい、という人は人事部へ連絡しましょう。

退職が認められた場合、上司や人事部の指示に従って退職の手続きを行います。

退職が認められなかった場合、民法上、2週間前までに上司に退職の意思を告げれば辞められるので、遅くとも休職期間が終了する2週間前に退職願が会社に届くように郵送すればOKです。

※郵送の方法は、「会社を辞める方法」の「リスクは承知で明日にでも辞めたい!今すぐ辞めたい人ができること」を参照。

ちなみに、みなさんは被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される傷病手当金という制度を知っていますか?

休職中もしくは休職する予定がある人は覚えておくとよいですよ。

傷病手当金制度の受給条件

  • 業務外の病気やケガの療養のために休んでいる
  • 仕事に就くことができない(医師による診断書が必要)
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない(休職の期間は医師と相談)
  • 休業した期間、給与をもらっていない

期間は1年6か月(出勤して給与があった期間を含む)で、1日あたりの金額は、

支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日÷2/3

詳細は「全国健康保険協会」でチェック!

退職願を出したあとの2週間の過ごし方

一番よいのは、2週間いつも通りに出勤して引き継ぎなどを行うことです。

しかし退職が認められなかった等、紆余曲折があった上でのことですから、「もう行きたくない」と思う人も多いことでしょう。

「もう会社に行きたくない」「消化する有給もない」

という人は、退職願を提出する際に、退職日までの2週間は欠勤すると宣言しましょう。

2週間の欠勤なので懲戒解雇が心配ですが、懲戒解雇にされることはまずないでしょう。

就業規則によるところがあるので一概には言えませんが、欠勤扱いにする会社が多いようです。

また、欠勤することを伝えているため無届欠勤にはならず、懲戒解雇の2週間以上に当たらないことから、懲戒解雇の対象にはならないと思われます。

しかし引き継ぎもせず2週間欠勤するというのは、多くの人に迷惑をかけることに変わりありません。

あくまで最終手段と考えましょう。

会社や上司の圧力に負けない強い意志を持って退職しよう

会社が退職を認めないのは法律違反です。

ましてや給料の未払い、賠償金の請求、不当な懲戒解雇も認められません。

このことを知っているだけでも、強引な引き止めや脅し文句に立ち向かう勇気が持てるのではないでしょうか。

何よりも「会社を辞めたい」という強い意志が大切です

社員を脅すようなブラック企業は早めに退職し、よりよい会社に転職しましょう。

池上 彰子

早めのリスタートで新たなキャリアを築きましょう!