会社をやめるときの退職理由の伝え方

「会社を辞める」たったそれだけのことを言うのに、気が重いと感じるのには理由があります。

「退職理由は何を言えばいい?」

「上司に引き止められたらどうしよう?」

このような不安があるから、上司に退職の意志を伝えることが負担に思えるのです。

また、「会社には今までお世話になったので言いづらい」という気持ちもあるでしょう。

精神的なストレスを最小限にして「会社を辞める」ことを伝えるには、自分の都合だけでなく、会社のことを考えて行動することがポイント。

上司が納得できる退職理由を伝えることと、適切な退職時期を選んで早めに報告することで「辞めたいのに辞めさせてもらえない」という事態を回避することができます。

今回は、上司も思わず納得してしまう、スマートな退職理由の伝え方を紹介します。

石峰朱実石峰朱実

上司に退職の意を伝える時、本音と建て前が交差し、言葉選びに迷うことがありますよね。
今回はそんなケースを想定して伝えるタイミングやマナー、伝え方の事例を挙げていきます。
退職後、いつどこで誰と顔を合わせても笑顔で挨拶できるようにしておきましょう。

誰にいつ言う?退職理由の伝え方の基本3つ

会社を辞めることを伝える人や時期を間違えると、「退職を認めてもらえない」「会社を辞められることになったけど、退職までの1カ月居づらい」といったような、円満退職とは程遠い事態を招いてしまいます。

会社も自分も納得するかたちで会社を辞めるためにも、退職の意思を伝えるときには次の3つのことを守りましょう。

1. 退職する旨の報告は直属の上司にする

会社を辞めることを一番に報告しなければいけないのは、直属の上司です。

これは、あなたを管理する人に対するマナーだと思ってください。

もし上司より先に先輩や同僚へ会社を辞めることを話してしまうと、先輩や同僚を通してあなたが退職することが上司に伝わる可能性があります。

それを聞いた上司は、あまりいい気はしないでしょう。

このように会社を辞めることを一番に言う人を間違えると、円満退職から遠のいてしまいます。

先輩や同僚へ「退職しようか迷っている」という内容の相談はかまいませんが、「転職先が決まったから退職する」「◯月◯日に退職する」などの決定事項は、上司へ報告するまでは誰にも話さないようにするのが、円満退職のコツです。

2. 退職希望日の1カ月~3カ月前の就業時間以外の時間帯に報告

会社を辞めると上司に伝えるときの心配事のひとつに「会社を辞めることを認めてもらえなかったらどうしよう?」という不安がありますよね。

会社を辞めることを認めてもらえないのは、上司への報告から退職希望日の間に日にちがなかったり、会社の繁忙期で人手が足りない時期だからということが考えられます。

まずは、退職を想定している日が会社の繁忙期ではないか、自分が手がけている仕事が中途半端な状態ではないかを確認しましょう。

繁忙期を避けることは、周りに迷惑をかけずに辞められるのはもちろん、自分自身も後ろめたい気持ちにならなくてすむというメリットがあります。

上司への報告の時期は、退職希望日の1カ月~3カ月前がベスト。

民法上、退職希望日の2週間前までに退職の意志を伝えれば辞めることは可能ですが、引き継ぎの期間がないと会社の人に迷惑がかかります。

退職希望日から2週間ない場合は、退職を認めてもらえない可能性もあるので注意しましょう。

ちなみに上司に伝えるときは、朝一番に約束を取り付けておくことをオススメします。

朝一に、「業務のことではないのですが、お話ししたいことがあるのでお時間をいただきたい」などと伝えると、上司の業務などの都合を見て時間設定してもらえるでしょう。

場合によっては業務時間外になることもあります。

3. 退職する旨の報告は人のいないところで

退職する旨の報告は基本的に他の社員がいる前ではなく、上司と2人きりで話します。

「少々お時間いただけませんか?」と話を切り出せば、上司の方から会議室などに誘導してくれるでしょう。

もしその場で話すよう言われたら、場所を変えるようあなたから上司に伝えましょう。

上司と2人きりという状況で緊張するかもしれませんが、退職の意志を強く持って話をすればきっと伝わりますよ。

糸井 嘉人

上司に退職することを報告するときは、退職願と退職届のどっちを持っていけばいいですか?

石峰朱実石峰朱実

上司に報告するときは退職願を持っていきましょう。

宮里 明

退職願って決まった書式があるのかな…書き方がわからないです。

石峰朱実石峰朱実

退職願の書き方や提出までの流れについては、「退職届・退職願の正しい書き方と提出までの流れ」で詳しく紹介しているので、参考にしてください。

上司に会社を辞めることを切り出すときのマナー

退職の意志が固まり、退職予定日が決まったら上司へ報告しましょう。

上司へは直接声をかけるのがよいですが、声をかけにくい事情がある人はメールで上司の予定を聞いてもOKです。

上司に口頭で切り出す際の注意点

「すこしお時間よろしいでしょうか?」と上司にいう男性社員

上司へ直接声をかける際に気をつけたいのは、「退職の相談と事前に気づかれる」ことと「上司以外の人に退職することがわかってしまう」こと。

あなたが会社を辞めることがウワサになってしまうと、引き継ぎの件や退職理由の詮索などで少なからず社内が混乱することが考えられます。

他の社員に配慮して、上司へ声をかける際の言葉選びには気をつけましょう。

上司に切り出すときのよい例

「すみません、少しお時間いただけませんか?」

「お話したいことがあるのですが、お時間いただけないでしょうか?」

このような、「どんな内容の相談かわからない」ライトな印象の言葉を使いましょう。

声をかけられた上司は「何の相談かな?」と身構えずにすみます。

上司に切り出すときの悪い例

「大切なお話があるのですが」

「今後のことで相談があります」

以上のような、退職のことを匂わせてしまうような言い方はNGです。

近くに上司以外の人がいた場合、あなたが退職するかもしれないことがウワサになってしまいますし、上司も話し合いの前に身構え、引き止めるための対策を考えることになります。

上司にメールで切り出す際の注意点

上司に声をかけづらい、上司が忙しそうで声をかけるタイミングがないなどの場合は、メールでアポイントメントをとるのも方法のひとつです。

ただしメールではアポイントメントを取るだけで、会社を辞めることまでは伝えない方がいいでしょう。

メールで退職の連絡をしてきたということで、マナーが悪いという印象になりかねません。

また口頭で声をかけるときと同様に、会社を辞める相談であることを悟られないようにしましょう。

以下でメールの例文を紹介しますので、参考にしてください。

山田課長

お疲れです。中田です。

折り入ってご相談したいことがあるのですが、ご都合のよいときにお時間をいただくことは可能でしょうか?

お忙しいところお手数ですが、よろしくお願いいたします。

中田

上司に納得してもらえる退職理由の伝え方

上司に退職することを伝えるのは、気が重いと感じる人も多いのでは?

とくに会社に不満があって辞める人、人間関係が原因で辞める人、特別な理由はないけどなんとなく嫌になって辞める人なんかは、退職理由をどう伝えるべきかわからず、会社を辞めることを言い出しにくいと思っているのではないでしょうか。

少しでも心理的な負担を減らすために、退職の相談がスムーズに進むような退職理由を用意しておきましょう。

会社や人間関係の不満は退職理由として納得してもらえないかも

退職理由を上司に伝える男性社員

「給料が安い」「休日出勤が多い」「意地悪な先輩がいる」等が実際の退職理由であっても、会社や仕事、人間関係の不満は退職理由として伝えるにはふさわしくありません。

会社の不満は、人によっては仕事の愚痴や会社の悪口に聞こえることもあり、上司をイヤな気持ちにさせてしまいます。

また人事異動や仕事の割り振りなどの対策を講じてもらえる可能性はあるものの、退職したい気持ちが変わらなかった場合、その後は退職の意を余計言い出しにくくなるでしょう。

人間関係を退職理由として伝えたら「人間関係の問題はどの会社に行ってもつきものだから考え直したら?」とお説教されてしまうかもしれません。

会社や仕事、人間関係の不満はどの会社でも起こりうることであり、上司が対策をとって解決することも可能な内容だと解釈されがちなため、建前の退職理由を考えることをオススメします。

上司が納得する退職理由は「個人的な事情」と「ポジティブな事情」

建前の退職理由が必要なら、上司が「それなら仕方ない」と納得せざるを得ない退職理由を考えましょう。

「個人的な事情」や未来へ向けた「ポジティブな事情」のどちらかが退職理由なら、上司に認めてもらえる確率が高いです。

もしかしたら、建前の退職理由だと気づく上司もいるかもしれませんが、本人が主張している以上は認めざるを得ないでしょう。

ただしあまりにも不自然な作り話は禁物。

たとえば自営業の実態がないのに、「家業を継ぐ」などの大きなウソをつくと、上司に質問された際に辻褄を合わせるのに大変です。

できるだけ自分の状況に合うような建前の退職理由を考えましょう。

これから紹介する「個人的な事情」と「ポジティブな事情」の退職理由例を参考にしてください。

個人的な事情

体調や家族のことなど、個人的な事情が退職理由であった場合、デリケートな問題として捉えられ引き止めにくいと感じてもらえるようです。

  • 結婚、夫(妻)の転勤により引っ越しすることになった
  • 親の体調がよくないので実家に帰ってそちらで仕事をすることになった

以上のようなことが、個人的な理由となります。

本当に個人的な事情から会社を辞めなければならないという方は、そのまま正直に伝えましょう。

建て前の理由として伝えるなら、すぐに嘘だとわかり気まずいことにならないよう、できるだけ現実味のある理由にするほうがよいでしょう。

【退職理由の伝え方例】
「父の体調があまりよくなく、両親を手伝うために実家近くで働くことにしました。大変申し訳ないのですが、◯月末で退職させていただきたいと思っています」

ポジティブな事情

ポジティブな事情とは、自分の将来をよりよいものにすることを目的として退職理由を伝えることです。

  • 資格を取るために学校へ通う
  • 仕事をする中で専門性を高めたいと思える分野に出会った(から専門性を高めるための転職がしたい)
  • 自分の力を試してみたいから外資系企業のようなところで働きたい
  • 知り合いから仕事を手伝ってほしいと言われ、自分もやってみようと思う

退職理由がポジティブなものである場合、前向きになっている気持ちに水を差すような気がして、引き止めにくいという心理が働きます。

【退職理由の伝え方例】
「以前から◯◯業界に興味を持っておりまして、年齢や将来のことを考えると今が転職のよいタイミングなのではないかと思い転職することにしました。まことに勝手ではありますが、◯月いっぱいでの退職を考えています」

このような理由を話してもなお、引き止められた場合は、次(再就職先や家族との予定)が決まっていることを伝えてきちんと断りましょう。

上司に会社を辞める理由を伝えるときの2つのポイント

「会社を辞める」ことを上司に話す際、ただ話せばよいというものではありません。

退職の相談ではなく退職の意志をはっきりと伝えること、そして自分の希望を押し通すのではなくきちんと話し合って退職することが円満退職へと繋がります。

退職の相談ではなく報告する

「会社を辞める」と言いにくいからといって「会社を辞めようと思っているのですが…」といったように相談ベースで話をしないようにしましょう。

上司からは、本当に相談だと思われてしまい、問題を解決するための話し合いになってしまいます。

会社を辞める意思が固まっている場合は、理由も添えてその意思をはっきりと伝えましょう。

そのうえで、退職日の決定や引継ぎなど、今後どのように進めていくかを相談するための時間を持っているという共通認識をもってもらえるように上司と向き合いましょう。

一方的な主張をしない

「◯月◯日で辞めます」と断言するのは、一方的な印象を与えるためよくないでしょう。

会社側の事情もあるので、辞めることを「断言」しないのが円満退職するためのポイント。

退職する気持ち自体は決定事項のため変わらないが、退職日は会社の都合を考えてできるだけ臨機応変に対応する、というような柔軟な姿勢を見せましょう。

「◯月いっぱいで退職したいのですが」と、退職日はあくまで希望として伝えます。

石峰朱実石峰朱実

今までお世話になった会社への礼儀と、あなたが担当していた仕事を引き継ぐ社員への気遣いを忘れずに!

「会社を辞める」と言えない人に知ってほしい無断欠勤のリスク

無断欠勤のリスクを真剣に考える男性

どうしても上司に会社を辞めると言えない人は、会社を無断欠勤してそのまま会社を辞めてしまおうと考える人もいるかもしれません。

無断欠勤はマナー違反であることはもちろん、退職後のあなたにも重大な影響を及ぼします。

無断欠勤をして会社を辞めた場合のリスクを知っておきましょう。

会社の無断欠勤が家族にバレる

まず無断欠勤をした場合、上司から電話であなたに連絡があります。

その連絡を無視して放置していると、今度は会社の人が自宅に来るでしょう。

そして無断欠勤をして本人と連絡が取れない場合は保証人へ連絡することになっている企業がほとんどです。

保証人を親や兄弟にしている人は、当然家族に無断欠勤していることがバレてしまいますし、家族に迷惑をかけることになります。

無断欠勤が理由で懲戒解雇に!?転職が難しくなる

無断欠勤による懲戒理由を定めている企業は多いです。

「どうせ会社を辞めるなら自己都合の退職も懲戒解雇も一緒では?」と考える人もいるようですが、懲戒解雇は自己都合退職と別物です。

新しい転職先に、懲戒解雇されことをわざわざ自分から申告しなくても構いませんが、後々発覚すると、それが解雇理由となり得ます。

履歴書等に書かずに懲戒解雇されたことを隠すことも可能ですが、離職票や退職証明書から発覚することもあり、見つかった場合は経歴詐称とされ採用を撤回されることも。

懲戒解雇は極めて重い処分であることを再認識し、きちんと退職の手順を踏んで退職するようにしましょう。

どうしても会社を辞めると伝えられないなら「退職代行サービス」

無断欠勤のリスクを知ってもなお、会社を辞めることを上司に伝えられない人は、退職代行サービスを利用して、会社に退職の意志を伝えるのも方法のひとつですよ。

退職代行サービス「Jobs」なら、会社への連絡をすべて代行してくれるので、退職まで会社と連絡する必要がなくなります(アフターフォーローも追加料金不要!)。

LINEで無料相談ができるので、「会社を辞めます!」と言えずに困っている方は、お気軽に相談してみてください。

円満に会社を辞められる退職理由の伝え方まとめ

「会社を辞める」ことを伝えるのは、大変な労力のいることです。

不安なことも多いかもしれませんが、退職してしまえば関わることがなくなるので、あまり気負いする必要はありません。

退職理由をきちんと伝えて円満退職する方が、あなた自身も気持ちよく先に進むことができるはず!

適切な時期に適切な退職理由を上司に伝えて、スムーズに退職しましょう。

「今すぐに会社を辞めたい!」と考えている方は、こちらの記事も参考にしてください。

今すぐ会社を辞めたい!ストレスなく会社を辞める方法

監修者:石峰朱実(キャリア・コンサルタント)
石峰朱実
各種学校、公共事業にて主に就職支援を担当。また転職エージェントでの面接指導にもあたっており、人材業界での10年の勤務経験も含め、就転職支援では20年超のキャリア。>>詳細はこちら