「失業手当を満額もらうのと再就職手当をもらうのではどっちが得?」
「再就職手当がもらえるから早く再就職するように言われたけど、本当にその方がいいの?」
「正直、再就職手当をもらって再就職するメリットがわからない…」
このように、ハローワークで再就職手当の話を聞き、失業手当と再就職手当のどちらを受給した方がよいか迷っている人も多いのでは?
単純に計算をしたときに、再就職手当の受給額よりも失業保険の受給額の方が高くなるため、失業保険をもらうほうがお得と感じるかもしれません。
ですが受給額だけで、あなたにとってベストな選択かどうかを決めてはいけません。
というのも失業手当は、生活の心配をすることなく、仕事探しに専念できるよう支給されるものであり、失業したというだけで都合よく受給できるものではないのです。
失業保険を受取るには、「支給される金額は働いていたときの5~8割のため収入が減る」「自己都合退職の場合は3カ月の給付制限期間がある」「国民保険等の手続きが面倒」といった決してお得とは言えない面もあります。
再就職手当の受給も、転職活動に十分な時間が割けなかったり失業手当より支給される額が少ないといったデメリットがあります。
ですが再就職手当は、「ブランクの期間がないので再就職に有利」「退職後すぐに働くので生活費の心配がいらない」などのメリットがあるのです。
「失業手当を受給してじっくりと再就職先を探す」か「早めに再就職先を決めて再就職手当を受給する」か、どちらがお得と感じるかはあなた次第。
今回は再就職手当についてや、失業手当と再就職手当の違いなどを詳しく紹介します。
なんらかの事情で仕事を辞めることになった場合、次の仕事のこと、生活のこと、不安がいっぱいですよね。
そんな不安な気持ちを少しでも軽減するために活用できる公的な制度について一緒に学びましょう。
また、目先のことよりも将来的なことをしっかり考えて活動するためにはどうすればよいかの気づきもあると思います。
目次
再就職手当とはどういったお金なの?
再就職手当とは早期の再就職を促進するための制度で、雇用保険の加入者の失業手当受給が決定したあと、早期に安定した職業へついた人に支給されるお金のこと。
この場合の安定した職業とは、正社員の職に就くなど雇用保険の被保険者になることや事業主となり雇用保険の被保険者を雇用する立場になること(※1)です。
1年未満で更新が見込まれないアルバイトやパート、派遣社員といった非正規雇用での再就職は含まれませんので注意しましょう。
※1 被保険者を雇用していない自営業を開始した場合でも、待機期間満了後1か月の期間経過後より対象となります。
また、早期に再就職先が決まった人に支給されるお金なので、失業保険を満額受給してから再就職するなど、遅くに再就職した人は受け取ることができません。
再就職手当の受給資格
「再就職手当は、再就職先が早く決まったら誰でももらえるの?」
このように思った人もいるかもしれませんね。
再就職手当を受給するには以下の8つの条件、すべてに該当していなければいけません。
- 失業保険の受給手続き後、7日間の待機期間満了後に就職または事業を開始した人
- 失業手当の支給残日数が3分の1以上ある人
- 離職した前の事業所に再就職していない人、離職した前野事業所と資本・資金・人事・取引面で密接な関わりがない事業所に就職した人
- 自己都合で退職して3カ月の給付制限がある人で、3カ月のうち最初の1カ月間にハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職した人(※1)
- 再就職後、1年以上勤務することが確実な人(※2)
- 雇用保険の被保険者として就職した人
- 過去3年以内の就職において、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けたことがない人
- 失業手当の受給資格が決定するまえに、再就職先の採用内定が決まったのではない人(再就職手当がほしくて、内定していることを隠して失業手当の申請をしたのではない人)
※1:職業紹介事業者とは、就職や転職を希望する人たちと企業との仲介を行なう事業者のこと。マイナビやリクナビの転職エージェントなどが挙げられます。給付制限2カ月目以降は、求人サイト等によって就職した場合も給付対象となります。
※2:生命保険の外務員のように、1年以下の雇用期間で契約更新には目標達成(ノルマ達成)の条件がある、派遣社員で契約更新が1年以下で雇用契約の更新が見込まれないなどの場合は対象外。
参照)再就職手当のご案内
再就職手当はいくらもらえるの?支給される金額と計算方法
再就職手当で受給できる金額は、失業手当の支給残日数と離職前の給料により異なります。
計算式は以下の通りです。
または
所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額
このように計算式だけを紹介されても、自分は70%か60%のどちらで計算したらよいのか、基本手当日額とは何か、わからない人も多いでしょう。
以下で詳しく説明します。
所定給付日数の支給残日数について
所定給付日数とはあなたが失業手当を受給できる日数分のこといい、そして支給残日数とはまだ受給していない日数分のことをいいます。
そして再就職手当の金額を計算するときは、失業手当の支給残日数(まだ受給していない日数)がどれだけ残っているかによって、70%で計算するか60%で計算するかが決まるのです。
- 失業手当の支給残日数が3分の2以上ある人は70%で計算
- 失業手当の支給残日数が3分の1以上3分の2以下の人は60%で計算
たとえば失業手当の給付期間が90日間の人は、60日以上給付期間を残している人が70%、60日より少ない人は60%で計算するということですね。
基本手当日額についてと基本手当日額の計算式
基本手当日額とは、失業給付期間に支給される1日あたりの金額のこと。
ハローワークで失業手当を申請した際にもらえる「雇用保険受給資格者証」に、基本手当日額は記載されています。
ですがまだ申請していない人や、在職中で退職を考えている人でも、だいたいの金額を計算することができます。
基本手当日額の計算式は以下のとおりです。
離職時の年齢によって上記のパーセンテージは変わります。
たとえば離職時の年齢が29歳以下の場合、退職前6ヶ月間の賃金総額を180日で割った1日あたりの所得によってパーセンテージが次のように変わります。
離職時の年齢が29歳以下 | |
---|---|
2,480円以上4,970円未満 | 80% |
4,970円以上1万2,210円以下 | 50~80% |
1万2,210円~1万3,500円 | 50% |
このように低所得者ほど手厚いサポートが受けられるようになっているのです。
1,200,000÷180=6,6666…
6,666×0.8=5333
6,666×0.5=3333
基本手当日額は5,333円~3,333円と考えられます。
※給料は基本給、残業手当、休日手当、役職手当、交通費等を含む額面。ボーナス、退職金、出張手当、結婚祝い金等を除く。
Aくんの基本手当日額は5,000円~3,000円ということですが、そうなると再就職手当はいくらくらい受給できることになるんでしょうか?
Aくんの場合、失業手当の残日数が60日以上あるので70%で計算します。
5,000円で計算してみると、60×5,000×0.7=21万円となり、基本手当日額が5,000円の場合21万円の再就職手当が支給されることになります。
Aくんの場合は就職したら再就職手当として、21万円支給されるんですね。
うーん、得なのかどうかはまだわからないなー
失業手当よりも再就職手当がお得!再就職手当をオススメする3つの理由
「結局、失業手当をもらうのと再就職手当をもらって再就職するのとどっちがいいの?」と迷っている人にはぜひ、再就職手当をもらって再就職することをオススメします。
1. 求職活動の記録がなくても再就職手当がもらえる
再就職手当は求職活動の記録がなくても、受給することができます。
一方、失業手当を受けるには、1カ月に2回以上の求職活動実績をハローワークに申請することが必要です。
失業手当を受け取るために似つ様な、求職活動実績となる活動を以下にまとめました。
- ハローワークの求人に申し込む
- 転職エージェントの紹介求人の面接に行く
- ハローワークの職業相談を受ける
- 地方自治体や新聞社、求人情報提供会社などの公的機関が実施するセミナーに参加する
- 再就職に関連する国家資格の受験
これらに該当する求職活動実績をハローワークに申請すれば、失業手当の受給資格を得ることができます。
ですが、「求人サイトの閲覧や転職サイトへ登録しただけ」「知人への求人紹介依頼」などは求職活動実績に含まれません。
つまり失業手当の受給を目的に、適当に求職活動をしても意味がないのです。
せっかく求職活動をするなら「失業手当支給のための就職活動をする」より、自分の将来のために本格的に求職活動をして再就職し、再就職手当をもらったほうがいいかもしれません。
2. 再就職するまでの期間が短いため就職先が見つかりやすい
再就職手当を受給するためには、退職から期間をあけずに再就職する必要があるので、次に働くまでの期間が短くてすみます。
仕事をしていない期間が短ければ短いほど、次の就職先が見つかりやすいでしょう。
一方失業手当をもらいながら求職活動をすると、次に働くまでに期間が空いてしまうので、採用される確率がどんどん減ってしまう可能性があります。
なぜなら採用する側としては、仕事をしていない期間に求職者が何をしていたかはとても気になるからです。
「あまり働くのが好きじゃない人なのかな?」
「1年働いて失業手当の受給資格ができたらまた辞めるのでは?」
採用面接の際に、「就職に向けて資格取得の勉強をしていた」など求職者から前向きな理由が聞かれなかった場合はこのように思われるかも。
企業にブランクの期間についてうまく説明できない人、スムーズに転職したい人は、退職から期間をあけずに、再就職手当をもらって再就職することをオススメします。
3. 再就職手当と月給収入が獲得できるため家計が潤う
失業手当をもらう方が給付額のトータルが多いことは確かですが、再就職すると給料のほかに再就職手当の支給があるため、生活費にゆとりが出ます。
たとえば基本手当日額5,000円の人が失業手当を受給する場合、1カ月に15万円、3カ月で約45万円の支給があります。
ひと月の生活費は、貯金がなければ15万円ということになりますね。
次に再就職手当を受給する場合を考えてみましょう。
支給残日数が60日(失業手当の給付期間が90日間のため3分の2以上に該当)残っている状態で基本手当日額5,000円の人が再就職手当をもらう場合、約21万円の再就職手当が支給されます(60日×70%×5,000円=21万円)。
失業保険と同じように3ヶ月で割ったとして、1カ月に換算すると再就職手当は約7万円受け取れることになります。
再就職先の給料が手取り20万の場合再就職手当と合わせると、ひと月の生活費は27万円となります。
ひと月の生活費という点で見ると再就職して再就職手当を受給する方が、失業手当をもらって生活するよりずっと、余裕を持って暮らせますね。
※再就職手当は一括支給です。失業保険と比較して、1ヶ月分の収入にいくら差が出るかわかりやすく比較するために、再就職手当の1ヶ月分を算出しました。
実はお得じゃない!?失業手当を受給する際のデメリット3つ
「受給金額は失業手当のほうが多いのだから、満額もらってから就職する方がトクなのでは?」
「働かなくてもお金が入るならゆっくり休みたい」
失業手当をもらうメリットはズバリ、働かなくても収入が得られること。
金額面から考えても、失業手当を満額もらうのがお得に感じらるかも知れません。
ですが失業手当を受給すると、お得には感じられないデメリットもあるのです。
以下で、失業手当をもらうデメリット3つを紹介しましょう。
1. 働かなくてもお金は入ってくるがひと月の収入は減る
失業手当の金額は、前職の給料の5~8割です。
そのため働いていた頃より、ひと月の収入は減ります。
失業手当受給中は、限られた時間や収入のアルバイトしかできませんので貯金に頼れない人は生活費を押さえて数ヶ月暮らさなければいけません。
生活費が不安な人は、失業手当給付を受けるより働いたほうがいいでしょう。
※失業手当受給中に働いた日と収入があれば、申請が必要です。
2. 自己都合退職の人は3カ月の給付制限期間がある
自己都合退職した人は退職後、すぐに失業手当が支給されるわけではないことを知っていますか?
自己都合退職の場合、失業手当申請後、7日間の待機期間と3カ月の給付制限期間が設けられます。
たとえば、仕事がイヤで急に退職した人で貯金もない人は、失業手当がもらえない3カ月の間にアルバイトをすることになるでしょう。
同じ「仕事をして働く」のであれば、一時しのぎの仕事を探すより生活の安定が見込める正社員の仕事を探したり、自分自身のキャリアビジョンを考えた働き方を見つけたりするほうがよいかもしれません。
3. 国民保険、国民年金の手続きをしなければいけない
退職後、国民保険や国民年金は自分で支払わなければいけません。
また自己都合退職の場合、国民健康保険料の軽減措置が適用されないことも覚えておきましょう。
国民保険の保険料は、前年の収入によって決まります。
給付制限期間3カ月と失業手当給付期間3カ月、合計6カ月の保険料の支払いは収入が少ないと大変です。
さらに再就職後、社会保険に入る場合は国民健康保険の切替手続きが必要。
加入や脱退の手続きが面倒なうえに、国民保険料の軽減措置もないことがデメリットといえるでしょう。
- 雇用保険加入期間について
- 失業手当や就業促進手当などを1日も受けずに、前職の退職から1年以内に再就職し、雇用保険の被保険者となった場合、雇用保険の期間は通算されます。
自己都合退職の場合、失業手当の受給期間は雇用保険の加入期間が10年未満で90日です。
ですが、10年以上20年未満では120日、20年以上で150日と、雇用保険の加入期間が長いほど失業手当を受けられる日数が増えます。
「失業手当は、本当に必要になったときに最大限活用したい」という方は10年という年数を覚えておくといいでしょう。
たとえば雇用保険の加入期間が9年という人で、まだ退職していなければ今の会社でもう1年働いてから退職した方がいいということです
失業手当を受給しつつ、じっくりと再就職先を探すというのも方法のひとつです。
再就職手当の申請方法の流れと支給される時期
再就職手当は失業手当よりも受給できる金額が少ないですが、受給額以上のメリットがあることを紹介しました。
これを機に、できるだけ早期の再就職を目指す人もいるでしょう。
そこで、実際に早期で再就職を決めて、再就職手当を受給する際の申請方法について紹介します。
再就職手当を受けたい人は、就職日の翌日から1カ月以内に申請しましょう。
入金は、再就職手当を申請してから1カ月半以降です。
再就職手当の申請に必要なものや、申請から支給までの流れをまとめたので参考にしてください。
- 就職が決まったら、就職してから1カ月以内に必要書類を持ってハローワークへ行きましょう。
必要書類は採用証明書(事業主の証明が必要)、受給資格者証、失業認定申告書。 - ハローワークより再就職手当の支給申請書、雇用状況等証明書が渡されます。
- 再就職手当の支給申請書、雇用状況等証明書の本人記載欄を自分で記入し、事業主記載欄には事業主から証明書をもらってください。
- 再就職手当支給申請書、雇用状況等証明書、受給資格者証の提出方法は、本人がハローワークへ持っていくか代理人に持っていってもらう(委任状が必要)、または郵送のいずれかです。
- 提出してから約1ヶ月後にハローワークより企業へ申請者の在籍確認が行われます。
- 提出から約1カ月半後にハローワークから支給決定通知書が送付されます。
- 支給額が一括で口座に振込まれます。
前職より給料が下がった人が支給される就業促進定着手当もある
就業促進手当には、さきほど紹介した再就職手当のほかに、就業促進定着手当があります。
前職よりも1日分の賃金が下回る人に支給される手当を、就業促進定着手当といいます。
就業促進定着手当申請の条件と申請方法
就業促進定着手当をもらうには、以下の条件を満たす必要があります。
- 再就職手当を受けて再就職した人
- 再就職先での雇用保険の被保険者としての勤務が6カ月以上の人
- 再就職後6か月の賃金の1日分の額が、離職前の賃金日額を下回る人
申請期間は、就職日から6カ月経過した日の翌日から2カ月以内です。
申請には、就業促進定着手当支給申請書、出勤簿の写し(原本証明付き)、賃金台帳の写し(原本証明付き)、受給資格者証などが必要で、それら必要書類をハローワークへ提出します。
就業促進定着手当の計算方法
就業促進定着手当の支給額の計算方法は、以下の通りです。
働いた日数は、月給制の場合は暦日数(カレンダー上の日数)、日給・時給制の場合は労働日数で計算します。
月給制(5,000-4,500)×181(日)=9万5,000円(※1)
(※1)再就職手当70%受給後に働いた場合、就業促進定着手当は残日数の30%が上限となり60×5,000×0.3=90,000が上限となるため、月給制で支給される金額は9万円となります。
時給制(5,000-4,500)×117(日)=5万8,500円
※働いた日数は、2019年1月~6月のカレンダーで計算
早期の再就職には転職エージェントの利用がオススメ
できるだけ早く再就職先を探すなら、転職エージェントの利用がオススメ。
転職エージェントを利用した再就職は、給付制限期間1カ月目の再就職も再就職手当支給の対象となります。
また、一般の転職サイトには掲載されない転職エージェントだけが保有する非公開求人に応募できるところもオススメのポイント。
さらに転職エージェントなら、転職のプロが求職者の市場価値を客観的に判断してピッタリの仕事を紹介してくれることから、早期の再就職が可能です。
早めに再就職して再就職手当をもらいたい人は、保有する求人数が豊富で全国の人が利用できるリクルートエージェントとdodaエージェント、20代には20代の求人が豊富なマイナビ ジョブ20’sがオススメです。
再就職手当も失業手当もあなたの再出発を支える大事なお金
会社を辞めたあとの選択肢として以下の3つの方法があります。
- 失業手当をもらう
- 早期に再就職して再就職手当をもらう
- 失業手当も再就職手当ももらわず、すぐに再就職して雇用保険の加入期間を伸ばす
再就職手当と失業手当を比べたときに、再就職手当の方が受給額が低いため、失業保険を満額受給する方がお得だと考える人もいるでしょう。
求職活動しながら受給できるのも失業手当のよいポイントです。
ですが一概に失業手当をもらうほうがお得とは言えないデメリットもあります。
失業手当受給中がブランクとなり再就職で不利になることや、働いていたときの5~8割しかもらえず生活費に困っても限られた時間しかアルバイトができない等のデメリットがあるからです。
自己都合退職で給付制限期間がある人や、貯金がないのに仕事を辞めてしまった人、経歴に長期間のブランクを入れたくない人は、早めに再就職をして再就職手当をもらう方が「お得」といえるかもしれませんね。
いずれにしても、手当の目的はあなたの「再就職」を後押しするものです。
再就職手当も失業手当も最大限活かして、満足のできる再就職先を見つけましょう。
- 監修者:石峰朱実(キャリア・コンサルタント)
- 各種学校、公共事業にて主に就職支援を担当。また転職エージェントでの面接指導にもあたっており、人材業界での10年の勤務経験も含め、就転職支援では20年超のキャリア。>>詳細はこちら