「退職届を出すように言われたけど、何て書いていいのかわからない」
「退職届と退職願、会社を辞めるときはどちらを出せばいい?」
「退職届はいつ誰に出すの?」
このように、退職届の書き方や渡し方に悩んでいませんか?
会社を辞める際に、退職届を出さなければいけないと思っている人が多いようですが、実は退職届を出さなければ会社を辞められないという法律はありません。
ですが会社の就業規則により、退職届の提出が義務付けられている会社は多く、それらの会社では退職届の提出が必要です。
上司に相談を終えて退職が決まっている人は退職届を、退職の意志を会社側に伝えていない人は退職願を作成しましょう。
退職を決意してから、退職届の提出までのフローを完璧にするのが円満退職のポイント。
円満退職をして、新しい職場で気持ちよくで再スタートしませんか?
今回は、退職届の書き方と提出までの流れについて紹介します。
退職、転職を決意するというのは大変なエネルギーがいることですね。
それに加えて退職に伴う手続きや提出物を用意するにも時間も労力もかかるものです。
ですが、ここはあとひと踏ん張り最後までマナーを守り、飛ぶ鳥あとをにごさず、にしましょう。
お世話になった会社に礼儀をつくし、気持ちよく新たな一歩を踏み出しましょう。
目次
退職届と退職願、辞表の違い
退職届の書き方を説明する前に、まずは退職届について再確認しておきましょう。
会社を辞めるときに提出する書類として、「退職届」と「退職願」「辞表」があります。
どれも同じものと思っている人も多いようですが、それぞれに意味は異なり、誤ったシチュエーションで提出すると「常識を知らない人」と思われていまいます。
それぞれの違いについてきちんと理解して、状況に応じて使い分けましょう。
退職願
退職願は、退職の意志を伝える書類。
まだ上司に退職の意志を伝えていない段階において、「退職したい」と願い出るための書類です。
退職願が、上司に承諾されてから退職という運びになります。
退職願を出したあとに話し合いが行われることがほとんどで、退職願を出した時点で退職が決まるというわけではないので注意しましょう。
退職届
相談の上で上司に退職が認められたあと、提出する書類が退職届です。
「退職する」ことを会社に届け出る書類で、会社規定の書面があればそちらを使用します。
辞表
辞表は、社長や取締役など雇用契約を結んでいない役員が役を辞する際や、公務員が辞めるときに提出するものです。
会社と雇用契約を結んでいる会社員が会社を辞めるときには、辞表ではなく退職届ということになります。
退職届の提出は必要?
退職届の提出は任意です。
民法第627条では、「雇用期間の定めがない場合、いつでも解約の申し入れをすることができる」かつ「解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する」ことが書かれています。
つまり、2週間前に退職の意思を会社に伝えれば、退職届がなくても退職できるということ。
とは言え、引継ぎの段取りなどを考え、できるだけ会社に迷惑がかからないようにしたいものです。
◯◯ごろには退職することを希望している旨を伝え、はっきりとした退職日を決めてもらいましょう。
また、会社の就業規則に「退職の際には退職届の提出が必要」と書いてある場合は、退職届を出さなくてはいけません。
退職の相談をした際に、上司から退職届を出すように言われた場合も提出したほうがよいでしょう。
退職決意から退職届提出までの流れ
退職届提出までの流れを見てみましょう。
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1. 退職日の設定
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2. 上司に報告・相談
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3. 退職届の提出
1. 退職日の設定
退職日を設定するにあたり、まずは就業規則の退職手続きに関する項目をチェックします。
「退職希望日の◯カ月前までに申請が必要」といった記載があれば、その期日に従いましょう。
民法上では退職の2週間前に退職の意志を伝えればよいことになっていますが、円満退職するなら、就業規則の期日を守るのはもちろん、繁忙期かどうかや引き継ぎにかかる時間など、会社や周りの人のことを考えて退職日を設定する必要があります。
2. 上司に報告・相談
退職する時期が大体決まったら、直属の上司に退職の意志を伝えましょう。
退職願はこの段階で上司に提出します。
上司に引き止められて退職の相談が長引くことも考えられますので、退職したい旨の報告は余裕を持って早めに行うほうがいいですよ。
3. 退職届の提出
上司に退職を認めてもらったら、退職届を作成します。
退職届の提出は、早ければ早いほどよいので上司に退職について相談・受理してもらった翌日でも構いません。
遅くとも退職日の1カ月前には提出したいところ。
就業規則のある会社は、その規則にしたがって提出してください。
提出は、「直属の上司に手渡しで」がベスト。
お世話になった会社ですので、上司のいない間に机の上に置くといったマナー違反は行わないようにしましょう。
退職届を書くときに必要なもの
退職届の作成には、白い便箋と白い封筒、黒のボールペンか万年筆が必要です。
白の便箋
サイズはB5が一般的。
A4サイズでも構いません。
罫線はあってもなくてもどちらでもよいですが、罫線がある場合、罫線のシンプルなビジネス用のものを選びましょう。
白い封筒
郵便番号枠のないものを選びます。
B5の用紙に書く場合は長形4号、A4の用紙に書く場合は長形3号を用意しましょう。
黒のボールペンか万年筆
消せるタイプのボールペンは、時間が経つと消えるおそれがあるので使いません。
退職届など人事関係の書類は、労働基準法109条によって3年間の保管が義務付けられています。
そのため、消える可能性のあるボールペンは使用しないほうがいいのです。
退職届・退職願の書き方(テンプレート付き)
退職届と退職願の書き方を紹介します。
退職届や退職願は縦書きと横書き、どちらがいいのでしょう?
縦書きか横書きかで迷う人もいますが、一般的に縦書きで書かれることが多いので今回は縦書きの見本で解説します。
冒頭
一行目の中央に「退職届」または「退職願」と書きます。
書き出し
書き出しの言葉、「私事」は「私個人のことで恐縮ですが」という意味があり、自分のことをへりくだった表現なので行末に書きましょう。
「私事」と同じ意味で「私儀」という言葉があり、こちらを使ってもOK。
「私事」の後に句読点もしくは1字分空けるのは、バランスを取るためです。
退職理由
自己都合退職の場合、どんな理由であれ退職理由は「一身上の都合により」と書きます。
退職届に退職理由の詳細は書きません。
退職日
退職届の場合は退職日、退職願の場合は退職希望日を和暦で記入します。
和暦か西暦については縦書きの場合、和暦のほうが見た目もよく一般的。
西暦でも構いませんが、西暦・和暦それぞれで統一することが大事です。
文末
退職届の場合、退職することを認められたあとなので「退職いたします」。
退職願はこれから退職することを申し出るために「退職いたしたくここにお願い申し上げます」という表現になります。
届出年月日
退職届・退職願を提出する日付を記入します。
差出人情報
行の下の方に、正式な所属部署名を書き、署名、捺印を。
印鑑は、企業に最低でも3年は保管される正式な書類のためシャチハタは不可。
シャチハタを使うと「非常識な人」と思われます。
朱肉を使う認印を用意しましょう。
宛名
会社の最高執行責任者の役名とフルネームを記載。
必ず、自分の名前より上になるように配置します。
敬称は「殿」か「様」どちらでもOKです。
封筒の書き方(テンプレート付き)
封筒の表面中央に「退職届」または「退職願」と記載。
封筒裏面の左下に、自分の所属部署、氏名を記載します。
退職届または退職願は、三つ折りにして封筒へ。
書面は下から上に3分の1折り、さらに3分の1上に向けて重ねるように折るとキレイに折れますよ。
3分の1に折った退職届を封筒に入れたら、封入口をのりで止め「〆」を書き完成です。
退職届に関するQ&A
退職届を書くにあたって疑問に思うことを、Q&A方式で紹介していきます。
- 退職届は書面ではなくメールでもいい?
- 労働者からの退職の申し出は、口頭でもよく書面である必要はないため、メールでも法的な問題はありません。
ですが、退職願や退職届は書面で提出するのが一般的で、メールで退職届を書くのは「失礼」と考える上司も多いことから退職届は書面で提出するのが望ましいでしょう。
また、退職日の変更など、受信したEメールを加工することが可能なため、メールの退職届ではトラブルが起こることも考えられます。
トラブルを回避するためにも書面で提出したほうがいいでしょう。
- 退職届は撤回できる?
- 会社側の同意がない限り、退職届の撤回はできません。
労働基準法によると、労働者は2週間前に退職の意志を申し出れば、会社の同意なしで退職できることになっており、退職の意志を申し出た時点で退職が決定しているため撤回できないのです。
基本的に退職届の撤回はできないものと考え、退職願で退職の意志を伝えるのではなく、事前に上司に相談するなど、退職届を出す前によく考えて行動しましょう。
- 退職日の変更はできる?
- 退職準備と転職活動を並行して行う場合、「退職日を1か月後にしたが、再就職先の企業から今すぐにでも来てほしい、と言われたので退職日を2週間後に変更したい」ということもあるでしょう。
労働基準法では退職の2週間前に退職の意志を伝えれば退職できるので、2週間前なら退職日は変更できそうですよね。
ですが、退職届を出したあと、退職日の変更を自分の都合で勝手にすることはできません。
退職届提出後というのは、労働契約解除の申し込みを自ら行い、企業側はそれを承諾し合意による解約が成立した状態。
すでに成立した解約の契約について変更を申し入れるには、再度企業側の合意を得なければいけません。
よって、企業側の合意があれば変更は可能です。
とはいえ、引き継ぎや後任が見つからないといった理由から、退職日を早めてもらうのは難しい場合が多いでしょう。
- 会社都合で退職する場合、退職届は必要?
- 懲戒解雇を含まない、倒産や解雇、退職勧奨など、退職の主な原因が会社側にある場合の退職は会社都合の退職となります。
退職願や退職届は「自らの意志により退職を申し出る」ための書類なので、会社都合での退職の場合、退職届は提出しません。
退職の際に退職届の提出が必要な場合は、「一身上の都合」とは書かず「貴社、退職勧奨に伴い」といったように、会社都合により退職することを明記しましょう。
退職届の提出方法と書き方のまとめ
退職届は必ず提出しなければいけないものではありません。
就業規則により退職届の提出が必要な会社や、上司から退職届を出すように言われた場合は、退職届を作成しましょう。
退職届の撤回や退職日の変更は基本的にできないので、提出まではよく考えて行動を。
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上司への退職の伝え方や、退職日までに行うことがわからない人はぜひ利用してみてください。
- 監修者:石峰朱実(キャリア・コンサルタント)
- 各種学校、公共事業にて主に就職支援を担当。また転職エージェントでの面接指導にもあたっており、人材業界での10年の勤務経験も含め、就転職支援では20年超のキャリア。>>詳細はこちら