社外向けのビジネス文書を書くとき、あなたは最初に何をしますか?
パソコンの前に座り、インターネットで「ビジネス文書 例文」や「見積書 書き方」などと検索して、例文を探しませんか?
最近はたくさんのサイトで例文が公開されているので、大変便利です。
便利なのですが、それゆえ何も考えずにただ書き写しているだけという人も多いのではないでしょうか。
意味がわからないまま、ただ難しい文を並べるよりも、きちんと理解して文書を作る方が効率的です。
とくに社外文書を書くときは、相手を尊重し、礼儀を大切にすることを考えながら文を書く必要があります。
なぜなら社外文書は、社外の人とコミュニケーションを図り、お互いの信頼関係を築くという重要な役割を果たしているからです。
そして、社外文書はあなた個人だけでなく、会社全体の評価にもつながります。
「良い印象を与えるように」
「伝えたいことが正確に伝わるように」
社外文書の基本的な知識と書き方を理解しておきましょう。
目次
1. 社外文書「商取引文書」と「社交、儀礼文書」
「社外文書」は社外の取引先などに宛てた文書のことです。
社外文書には大きく分けて「商取引文書」と「社交、儀礼文書」の2種類あります。
各文書によって細かな言い回しは変わってきますが、相手を尊重し礼儀を大切にするのはどの文書も同じです。
商取引文書
商取引文書は、取引に関わる文書のことを言います。
依頼書や注文書はもちろんのこと、面会の申込み状や勧誘状も商取引文書に含まれます。
- 通知状
休日変更、取引条件変更などの通知 - 照会状
人事、在庫状況、商品未着などの紹介 - 回答状
照会に対する回答 - 依頼状
見積もり、請求書送付、求人などの依頼 - 注文状
商品・製品などの注文 - 申込状
新規取引、面会、求人、加入などの申込み - 勧誘状
入会、出展、出店、視察などの勧誘 - 交渉状
契約条件変更、値引きなどの交渉 - 催促状
代金支払い、納品、返金などの催促 - 承諾状
新規取引、契約、依頼、受注などの承諾 - 断り状
依頼、勧誘などを断る - 陳謝状
欠陥商品、納期遅延などに対する陳謝
社交、儀礼文
直接取り引きには関係ありませんが、会社同心の関係をつなぐ挨拶状や祝賀状、見舞い状などを社交、礼儀文と言います。
- 挨拶文
就任退任、会社設立、会社移転などでの挨拶 - 招待状
新社屋落成式、創立記念式典・祝賀会などへのご招待 - 案内状
新製品発表会、見学会、講演会などへのご案内 - 紹介状
新製品、知人などのご紹介 - 祝賀状
支店開設、創立記念日、社長就任などへのお祝い - 見舞状
病気、火災、震災、事故へのお見舞い - 弔慰状
お客様、取引先などへのお悔やみ
2. 社外文書の基本的な書き方5つのポイント
相手に敬意を表して、丁寧にこちらの意志を伝えるにはどうすれば良いのでしょうか?
社外文書を書くときの基本ポイントは5つあります。
社外文書を書くときのポイント
- 社名は正式名称で書く
「(株)〇〇」ではなく、「株式会社〇〇」と表示する。
- 社内文書以上に慎重な配慮が必要である
誤字・脱字、敬語の使い方、文章表現に気を配る。
- 相手を尊重し、礼儀を重んじる
催促状や抗議文でも、敬意を評した文章表現が求められる。
- 敬体文(です・ます体)を使用する
社外文書だから、もちろん敬体で文を書く。
- 数字やデータは正確に書く
数字やデータは間違えると、相手に迷惑をかけることになる。事前に確認して、正確に書くよう心がける。
これら5つのポイントは、すべてのビジネス書を書くときの基本とも言えますね。
どの項目もあたり前の事かもしれませんが、もう一度再確認しておきましょう。
3. 社外文書の基本フォーマット
次に社外文書の基本構造を見てみましょう。
会社によってはフォーマットが決まっていることもあるので、その場合は会社のフォーマットに従って書いてください。
社外文書の基本フォーマット
前付け
1. 文書番号
公文書の表示。
社内ルールに従う。
祝賀状、見舞状、弔慰状にはつけないのが一般的。
2. 発信日付
作成日ではなく、文書を発信する日付。(年号または西暦)
3. 受信者名
会社名、所属部課、職名、氏名、敬称(様)。
会社や団体あての場合は、「御中」とする。
4. 発信者名
会社名、所属部課、職名、氏名、(発信文書の責任者)、印。
本文
5. 件名
「~のご案内」など、簡潔に示す。
祝賀状、見舞状、弔慰状にはつけない。
6. 前文
「拝啓」などの頭語、時候の挨拶、感謝の挨拶、先方の繁栄を祝う挨拶。
7. 主文
「さて・・・」のお越し言葉で主文に入る。
8. 末文
「まずは・・・」など、結びの挨拶を述べる。
9. 記書き
箇条書きで列記する。
付記
10. 追記
追って書き、添付書類、同封物(種類と数)を書く。
11. 末尾
文章の終わりは「以上」でまとめる。
12. 担当者名
必要な場合のみ入れる。
(所属部課、担当者名、電話番号など)
4. 「お礼状」「悔み状」「見舞状」は縦書きで書く
どの社外文書も、基本的に先ほどの構造で書きます。
ただし、「お礼状」「悔み状」「見舞状」を書くときは少し異なるので注意が必要です。
大きく違う点は、「件名を付けない」ことと「基本的に縦書きで書く」ということ。
「お礼状」「悔み状」「見舞状」それぞれに気をつけたいポイントがあるので、例文とともに説明します。
「お礼状」「悔み状」「見舞状」を書くときのポイント
お礼状
出すタイミングは、その日か2~3日以内。
できるだけ早く出すよう心がけましょう。
また、感謝の気持ちを伝えることに徹底し、他の用件は書かないように注意してください。
悔み状
頭語や前文は省略し、「このたびは・・・」「承りますれば・・・」という言葉から始めます。
「承りますれば・・・」とは、「伝えたい事柄について」という意味です。
結語は省略し、「敬具」「合掌」を添えてもよいです。
見舞い状
頭語は添えますが、前文は省略します。
「前略」「急啓」を使用し、結語は「草々」を使います。
5. 社外文書の基礎知識「頭語」と「結語」
前項で「頭語」と「結語」という言葉が出てきました。
頭語とは、前文の書き出しに使う言葉のことです。
そして末文の結びに使う言葉を結語と言います。
頭語と結語は、基本的に一対で使います。
文章の内容や、状況に応じて使いわけましょう。
頭語と結語組み合わせ表
状況 | 頭語 | 結語 |
---|---|---|
通常の場合 | 拝啓 | 敬具 |
丁寧な場合 | 謹啓 | 謹白(敬具) |
前略 | 前略 | 草々 |
返信を出す場合 | 拝復 | 敬具 |
再発信の場合 | 再啓 | 敬具 |
急ぎの場合 | 急啓 | 草々 |
※「前略」は略式の頭語です。公式な場合や、目上の人に対して使わないようにしましょう。
6. 社外文書前文の書き出し「時候の挨拶」
前文の書き出しといえば、「時候の挨拶」。
時候の挨拶とは、前文の書き出しに使う決まり文句で、その時期や月に合った言葉を使います。
書き出しによくある「~の候」は、儀礼的要素の強い慣用句としてよく使われています。
時候の挨拶(前文の書き出しに使う挨拶)
時候の挨拶を、月別と時期別で表にまとめてみました。
月別時候の挨拶
1月 | 新春の候、初春の候、厳冬の候、酷寒の候 |
---|---|
2月 | 晩冬の候、余寒の候、春寒の候、向春の候、立春の候 |
3月 | 早春の候、残春の候、春寒の候 |
4月 | 春暖の候、陽春の候、仲春の候、晩春の候 |
5月 | 新緑の候、青葉の候、薫風の候、立夏の候、残春の候 |
6月 | 初夏の候、梅雨の候、向暑の候 |
7月 | 盛夏の候、酷暑の候、大暑の候 |
8月 | (立秋過ぎは)残暑の候、晩夏の候、立秋の候 |
9月 | 新秋の候、初秋の候、秋涼の候、新涼の候 |
10月 | 秋冷の候、仲秋の候、秋晴の候、紅葉の候 |
11月 | 晩秋の候、向寒の候 |
12月 | 師走の候、初冬の候、寒冷の候 |
時期別時候の挨拶
早春 | 日増しに暖かくなってまいりましたが、 |
---|---|
春 | ようやく春めいてまいりましたが、 青葉薫る頃でございますが、 |
梅雨 | 梅雨の長雨が続いておりますが、 |
夏 | 暑い日が続いておりますが、 暑中お見舞い申し上げます(立秋まで) |
残暑 | 残暑が厳しい折から |
秋 | 朝夕ずいぶん涼しくなってまいりましたが、 秋も深まってまいりましたが、 |
冬 | 暮れも押し迫ってまいりましたが、 寒さ厳しい折から、 |
7. 時候の挨拶の後に使う前文挨拶
時候の挨拶の後には、「会社の繁栄を祝う挨拶」や「相手の健康を祝う挨拶」が続きます。
さらに「日頃の愛顧への感謝の気持ち」を伝えることもあります。
前文に使う挨拶の例文
会社の繁栄を祝う挨拶
繁栄以外にも「ご発展」「ご隆盛」などがある。
相手の健康を祝う挨拶
ご健勝のほかに「ご清祥」も使う。
愛顧への感謝の挨拶
ご愛顧のほか「お引き立て」「ご厚情」「ご支援」「ご指導」などもある。
8. 「末文」で結ぶ
前文にて挨拶をし、本文で用件を述べたら、末文で再度挨拶をして文を結びましょう。
末文は、「引き続きの愛顧を願う挨拶」や「先方の発展や幸せを祈る挨拶」を書きます。
末文に使う挨拶の例文
引き続きの愛顧を願う挨拶
ご指導のほか「お引き立て」「ご愛顧」「ご支援」も使う。
先方の発展や幸せを祈る挨拶
社外文書の基礎知識を使った文
ここまでの「社外文書の基礎知識」を用いて文を書いてみると、次のようになります。
9. 返信はがきの書き方
社外文書の中には、相手側の案内に対して、こちらがお返事するというものもあります。
お返事するもので、特殊なものといえば「返信はがき」です。
たとえば、イベントの招待状や結婚式の招待状が届いたときに、返信用はがきが同封されていますよね。
返信はがきもビジネス関係のやり取りなら、れっきとした社外文書です。
返信はがきにもマナーはあるので、ここでしっかり確認しておきましょう。
返信はがき「出席」「欠席」の正しい記入方法
返信はがきは、裏面に書かれてある「出席」か「欠席」に◯をつけて返しますよね。
あなたは◯だけつけて、返信していませんか?
「失礼な!ちゃんと、出席の下に「させていただきます」って書いて出してるよ!」
と思った方、それも間違いです。
印刷された字の下に続けて書くのではなく、メッセージを添えた上で、全文を書くのがマナーなのです。
返信はがきの書き方例
出席または欠席する場合
出席の場合、お祝いの言葉、お招きのお礼、出席の旨を忘れずに書きましょう。
欠席の場合は、出席同様お祝いの言葉とお招きのお礼を書き、欠席の旨を理由とともに記入します。
もし欠席の理由がお葬式や病気なら、そのまま書かずに「出張のため」などの理由にしておきましょう。
代理出席の場合
代理出席の場合は、事前に電話などで代理でも良いかどうかを確認しましょう。
名前は招待された人と、代理出席する人の連名で書きます。
表書きは「様」の位置に注意。
縦書きなら「行」の左側に、横書きなら下に書くようにしましょう。
社外文書を書き慣れるまでは繰り返し見直そう
いかがでしたか?
今回の内容は、社内文書を書くときのベースとなります。
社外文書を書き慣れるまでは、繰り返し確認しながらスキルアップを目指しましょう!